
敗戦からの学びがなければ“鬼門”突破は今後も不可能。
仙台、神戸に連勝した勢いで3連勝を目論むFC東京が前節で仙台に敗れた鹿島とアウェイで対戦。“鬼門”と呼ばれて久しいアウェイ鹿島戦での奮闘を期待したが、終わってみれば金崎夢生に2発のゴールを決められ完敗。これで4節で既に2敗を喫し、1stステージへの“頂戦”は非常に厳しいものになってしまった。
それでも前半はなかなか拮抗した試合。シュート数もチャンスもほぼ互角で、あとは決定力というところだった。ミドルレンジからのシュートもあったりとそれなりの意識は垣間見えた。
ただ、米本と橋本のダブルボランチが献身的に“追い役”を担っていて鹿島に思うような攻めをさせていなかったのは良かったのだが、連勝時のように比較的長い時間ポゼッション出来る相手ではなかったこともあり、その分攻めは単発なものに。後方から縦への意識は森重などに見られたが、疲労蓄積や脚部の状態が良くないこともあり、精度の欠いたフィードも目立ってしまった。
それでも前半は最低限のスコアレスドローとして、さあ後半というところ。東京は一番集中しなければいけない開始5分で失点してしまう。前半の出来を考えると、どちらのチームも先制されると戦い辛いと予想されたが、ホームの鹿島がまずは一つゴールを決めると、一気に鹿島ペースに。東京は54分に田邉から河野、62分に水沼から梶山、74分に橋本から平山とピッチへ選手を送るも、一方の鹿島も同じように鈴木から遠藤、小笠原から永木、赤崎から土居と選手を交代させて対応。鹿島のエリア両サイド奥への進出が頻繁になると、それまで食らいついていた東京のディフェンス陣も次第にスキを突かれる回数が多くなり、容易に中央へ折り返される場面が増加。CKなどのセットプレーからも、GK含めたディフェンスで先にボールを触られる状況が続いてピンチの波が訪れると、最後は耐え切れずに枚数が揃うも棒立ちとなっていたDF陣を尻目に金崎が見事なダイレクトボレーを決めて追加点を挙げる。GKがノーチャンスの鮮やかなゴールは得点以上のダメージを東京に与え、その後は鹿島らしい時間稼ぎにも全く抗うことが出来ずの敗戦となった。
チームを構築しながら結果を出すというテーマは解かる。だが、ゴールへ向かう意識とクオリティの差が激しかった。ポゼッションが出来るとアタッキングサードあたりで横パスを連発するが、この日はそれもままならないため、縦へのパスを狙う意識はあったものの前線の前田や東へボールが収まらない時間帯が続いた。それは鹿島が強固な守備をしてきたというよりは、ボールを持ってからの判断の遅さ、球離れの遅さ、前への推進力のなさが生み出していたといえる。相手のプレッシャーに慌てて近くの味方の足下ばかりへパスを送るゆえ、ボールがどこへ渡ろうとも鹿島にとっては次の対応がしやすい状況になり、ボールを前方に配球しようとするも、小笠原やこの日は低い位置で構えていた柴崎あたりのボランチ付近で引っ掛けられてボールをロストする場面が多発。また、攻勢を強めていても、ゴールへ近づくにつれて味方を待つのかスローダウンして相手を引き付け過ぎたり、狭い地域ではっきりしないスピーディでないパス交換を試みようとして相手に奪われたりと、攻めも守りも中途半端なままでフラストレーションばかりが溜まる展開となってしまった。サイドをえぐってシンプルに中央へクロスを送っていた前半の方がまだ相手のゴールへ迫っていたが、後半は時間が経つにつれて、シンプルな攻めを“変化・工夫がない”ことと思い違えたのか、“ここぞ”という場面で自らチャンスを逃し続けていた。特に、ゴールへの可能性が高いパスがエリア内へ送られたにも関わらず、水沼にシュートを任せてスルーしてチャンスを自ら逃した東のプレーには幻滅しかない。
橋本のオーヴァーヘッド、前田のヘッド、平山がエリア深くまでドリブルで進出して河野へのラストパス……などゴールの匂いがする場面はあるにはあった。だが、それ以上に攻撃を活かせずにボールを奪われたり、シュートを打てる場面を作りながら打ち切れぬまま相手DFに引っ掛けられるなど、消化不良に終わる場面が多過ぎた。
また、守備ではセットプレー対策がいまだに構築されていない。ファンブルや飛び出したにも関わらずボールを先に触れられないGKの不安定なども含めて、ディフェンスを多角的な視野から検証する必要があろう。いくら強固なDF陣とはいえ、森重の不調、小川の安定性などを考えると、ボランチや中盤ももっと連動した形でDF陣とともに防御システムを築いていかねばならない。
戦術についてもやや不明瞭なところが。相手陣内へ攻勢をかける有効な人員がベンチ内にいないものか。この試合で出場出来ないバーンズやベンチ入りも果たしていないサンダサは今後有効な選択肢になり得るのか。水沼のフィットしなさ加減はどう解消していくのか、頭を悩ませることは尽きない。
敢えてポジティヴなところを挙げるとすれば、平山が戻って来たことくらいか。それと本来ならスタメン起用が予想されていた阿部は風邪によって出場回避とのこと。この先阿部が活躍出来ぬようなら、攻撃陣のテコ入れという緊急対策も考える必要があろう。
代表ウィークによる一時中断前に印象の悪い痛い敗戦。これで優勝を狙うにはもう負けられない分水嶺となる。ACLとの兼ね合いもあり難しいだろうが、4月のリーグ戦5試合はホーム3試合、アウェイも関東近郊のみ(柏、甲府)と移動も少ない。無敗かつ出来る限り勝利を積み重ねなければ、当初の1stステージでの目標の位置付けも考えなければならない。この代表ウィークを疲労回復と戦術・連係構築の良い機会と捉えて、有意義な時間を持ってACLとホーム名古屋戦へ備えてもらいたい。
◇◇◇
【J1リーグ戦 第4節】
2016年03月19日/県立カシマサッカースタジアム/15:04キックオフ
観衆:15,996人
天候:曇一時雨、弱風
気温:18.2度/湿度:85%
主審:東城穣/副審:中野卓、川崎秋仁
鹿 島 2(0-0、2-0)0 FC東京
得点:
(鹿):金崎夢生(50分)、金崎夢生(88分)
(東):
≪スターティングラインアップ≫
47 GK 秋元陽太
02 DF 徳永悠平
03 DF 森重真人
05 DF 丸山祐市
25 DF 小川諒也
07 MF 米本拓司
37 MF 橋本拳人 → 平山相太(74分)
48 MF 水沼宏太 → 梶山陽平(62分)
27 MF 田邉草民 → 河野広貴(54分)
20 FW 前田遼一
38 FW 東慶悟
≪サブスティテューション≫
31 GK 圍謙太朗
04 MF 高橋秀人
10 MF 梶山陽平
17 MF 河野広貴
22 MF 羽生直剛
09 FW 平山相太
16 FW ネイサン・バーンズ
≪マネージャー≫
城福浩
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【J1リーグ】
≪1stステージ≫
第01節 2016/02/27(土)19:00✕FC東京 0-1 大 宮(H・味スタ)
第02節 2016/03/06(日)15:30〇FC東京 2-1 仙 台(A・ユアスタ)
第03節 2016/03/11(金)19:00〇FC東京 1-0 神 戸(H・味スタ)
第04節 2016/03/19(土)15:00✕FC東京 0-2 鹿 島(A・カシマ)
第05節 2016/04/02(土)16:00 FC東京×名古屋(H・味スタ)
第06節 2016/04/10(日)19:00 FC東京× 柏 (A・ 柏 )
第07節 2016/04/16(土)15:00 FC東京×川 崎(H・味スタ)
第08節 2016/04/24(日)14:00 FC東京×甲 府(A・中銀スタ)
第09節 2106/04/29(金)17:00 FC東京×福 岡(H・味スタ)
第11節 2016/05/08(日)16:00 FC東京×湘 南(A・BMWス)
第12節 2016/05/13(金)19:00 FC東京×鳥 栖(H・味スタ)
第13節 2106/05/21(土)14:00 FC東京×浦 和(A・埼 玉)※ ACLラウンド16進出 → 2016/06/22(水)に変更あり
第14節 2016/05/29(日)17:00 FC東京×G大阪(H・味スタ)
第15節 2016/06/11(土) FC東京×磐 田(A・エコパ)
第10節 2016/06/15(水)19:00 FC東京×広 島(H・味スタ)
第16節 2016/06/18(土) FC東京×新 潟(H・味スタ)
第17節 2016/06/25(土) FC東京×横浜FM(A・日産ス)
◇◇◇
それにしても、あまりにも“鬼門”ばかりが耳に入るので調べてみたところ、2000年以降におけるFC東京のリーグ戦でのアウェイ鹿島戦の勝敗は次のとおりとなった。
2000年✕FC東京 1-2 鹿 島(富山陸)(大熊清)
2001年✕FC東京 1-3 鹿 島(カシマ)(大熊清)
2002年✕FC東京 1-2 鹿 島(カシマ)(原博実)
2003年✕FC東京 0-2 鹿 島(カシマ)(原博実)
2004年△FC東京 0-0 鹿 島(カシマ)(原博実)
2005年△FC東京 1-1 鹿 島(カシマ)(原博実)
2006年✕FC東京 2-3 鹿 島(カシマ)(倉又寿雄)
2007年〇FC東京 2-1 鹿 島(カシマ)(原博美)
2008年✕FC東京 1-4 鹿 島(カシマ)(城福浩)
2009年✕FC東京 1-3 鹿 島(カシマ)(城福浩)
2010年△FC東京 1-1 鹿 島(カシマ)(城福浩)
2012年✕FC東京 1-5 鹿 島(カシマ)(ポポヴィッチ)
2013年✕FC東京 2-3 鹿 島(カシマ)(ポポヴィッチ)
2014年△FC東京 2-2 鹿 島(カシマ)(フィッカデンティ)
2015年✕FC東京 1-2 鹿 島(カシマ)(フィッカデンティ)
勝利したのは2007年のヒロミ時代の1回のみで、15試合戦って1勝4分10敗と言葉通りの“鬼門”状態。また、2000年以降のホーム・アウェイ含めたリーグ戦でのFC東京の鹿島戦の対戦成績は通算で30試合5勝7分18敗、得点40失点60得失点差-20というデータに。アウェイどころかホームでも勝てていない。
さらに、2000年以降のFC東京のリーグ戦での全チームとの対戦成績を調べると、(J2時代に栃木と戦った1分1敗を除くと)一番勝率が低いのは鹿島戦で僅か16.67%に過ぎないという体たらく。浦和が28試合7勝6分15敗の25%でこれに続き、以下川崎、磐田、広島が30.77%で並んでいる。つまり、これらのチームから着実に勝ち点3を奪っていかない限り、頂上は見えてこないということだ。
4月16日の多摩川クラシコとなる川崎戦。現在好調の川崎だが、ここでしっかりとした結果を残せないならば、FC東京の1stステージでの戦い方もACLの状況いかんでは“年間”を見据えた戦いにシフトチェンジすることも強いられそうだ。
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ところで、鹿島のゴール裏に夏の参院選出馬が噂されるSPEEDの今井絵理子が来ていたとのこと。どうやら水戸で開かれた納豆を食べるスピードを競う「水戸納豆早食い世界大会」にゲスト参加した後に来場した模様(食べるスピードを競う→“SPEED”繋がりか)。
SPEED繋がりもいいけれど、沖縄出身なんだから、20日の西が丘でのFC東京U23対FC琉球の試合に来て、FC琉球を応援するべきと思ったのは、オレだけではないはず。
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