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近況注意報 1105 音楽篇(1)【3055】

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 先日、2016年10月末日をもって音楽レビューサイト「3055」が閉鎖されました。「3055」は〈「音楽が売れない時代」だからできることがある〉をコンセプトに立ち上げた音楽ファンのレビューポータルで、ライター/プランナー/編集者として活躍する印南敦史さんが2011年に創刊・主宰したウェッブ・サイトです。

 2014年の夏よりレビュー等の更新が滞っており、実質開店休業状態となっていましたが、先日2016年10月を持って閉鎖とのアナウンスがあり、予定通り11月1日より当該サイトが閉鎖、アクセス不可能になりました。自分はその「3055」に、少しばかりですが、アルバム・レビューをさせてもらっていました。
 こちらは単なる一人の音楽好きの域を出ないズブの素人ですので、実際に印南さんと面識があった訳でもなかったのですが、著書のR&Bガイドブック『Juicy』シリーズを愛読していたことをきっかけに、たまたま「3055」のレビュアーとして声を掛けていただくことになった次第です。
 形式としての一定のルールはありましたが、内容については自由に執筆可、対象アルバムの選定もフリーと自身の裁量に任せてもらえ、拙文でありながらも表現の場を与えてくれた印南さんには感謝するばかりです。

 残念ながら(というよりあまり役に立てずに)サイトが閉鎖されてしまい、自分を含む他のレビュアーの方のレビューも見られなくなってしまいました。自分が書いた原稿というのはなんだかんだ言いながら可愛いもので……ということでもないのですが(むしろ読み返すとセンスがなくて情けなくなる)、読まれなくなってしまうのは(CDアルバム紹介の機を失うという意味でも)惜しい気もしたので、自身の執筆の上での課題を目に晒しておくという意味で、別途記事としてエントリーしようと考えました。気になるアルバムやアーティストの作品のレビューを読んでみて、それが作品を聴くきっかけになれば嬉しいです。

 3回に分けてエントリーしていきます。よろしければ、どんと見据えて!(Don't miss it!)

◇◇◇

≪2012年掲載分≫

■INCOGNITO/Surreal
[ 2012 ] Shanachie

 アシッド・ジャズ界を牽引してきたブルーイことジャン・ポール・モーニックのユニットは、鮮度と普遍を巧みに調和させて高品位の作品を創り上げてきたが、この2012年作でもそのスタンスは変わらない。

 ユニット名は“匿名”という意味だが、なるほど中心のブルーイはサウンド・プロダクションに没頭して我を持ち出さない。だが、美麗なヴォーカル、鮮やかなホーン、そしてなによりも洗練されたグルーヴが秀逸のサウンドは、一聴してそれと解かる“匿名”という普遍的ブランド性に溢れている。

 鮮度としてはヴォーカリストの役割が大きい。特にモー・ブランディス(時折ジョージ・マイケルを想起させるソウルフルな歌唱も)は、男性シンガーとして長期尽力してきたトニー・モムレルの穴を埋めるに相応しい新たな風だ。そこへ“ヴォイス・オブ・インコグニート”ことメイザも参加、新風と伝統が融合した“シュール”な世界へと導いてくれる。

強大なインパクトはないが、モダンでシュールな世界を愉しむには存分な一枚だ。

May 22 ,2012 UP (Baseball Mania)

1. The Less You Know 2. Goodbye To Yesterday 3. Above The Night 4. Ain't It Time 5. Capricorn Sun 6. Don't Wanna Know 7. Restless As We Are 8. Rivers On The Sun 9. Don't Break Me Down 10. The Stars From Here 11. To Be With You 12. This Must Be Love 13. The Way You Love 14. Thoughtful Fantasies


■Steve Russell/SO RANDOM
[ 2010 ] MOTEL MUSIC MEDIA

 80年代後期に結成され、“Spread My Wings”などのヒットを持つグループ、トゥループの元メンバーによるソロ作。

 とにかくマイケル・ジャクソンへの熱量が尋常でない。“ポゥ”の奇声が随所に顔を出す“Work It”からはじまり、冒頭が「今夜はドント・ストップ」を思わせる“Bring It Back”、かつての盟友チャッキー・ブッカー制作の“D.A.N”は“Human Nature”が見え隠れ。そしてもう待てないとばかりに“Rock With You”を思う存分カヴァー……という具合だ。

 後半は90年代の良質R&Bを踏襲した本来の姿で勝負。B2K提供曲のセルフ・カヴァーもいいが、元エクスケイプのキャンディ客演の濃密スロウ・ジャム“I Wanna Give It To You”が白眉だ。

 ボン・ジョヴィ風ロック“Hot Mess”を境に色合いが異なりやや統一感は欠けるが、曲単位では文句なし。マイケルとR&Bへの絶大なる愛が伝わる好盤だ。

May 25 ,2012 UP (Baseball Mania)

1. Work It 2. Bring It Back 3. D.A.N 4. Rock With You 5. Hot Mess 6. Disappear 7. I'll Never Hurt You 8. Never Feel That Feeling Again 9. Gots Ta Be 10. I Wanna Give It To You 11. Not In A Million Years 12. Thank God For You


■Robert Glasper Experiment/Black Radio
[ 2012 ] Blue Note Records

 ヒューストン出身のピアニストで、ゴスペルからR&B、ヒップホップまでを取り込んだオルナタティヴな精神でジャズを体現するロバート・グラスパーのBLUE NOTEレーベル4作目、“エクスペリメント”名義では初となるアルバム。

 タイトルからも分かるように、エリカ・バドゥ、ビラル、ルーペ・フィアスコ、レイラ・ハサウェイ、レディシらR&B/ヒップホップ界の実力者たちの力添えを得て、ブラック・ミュージックの創造や革新の可能性を説いている。オリジナルに加え、アフロキューバンなスタンダードやシャーデー、デヴィッド・ボウイ、さらにはニルヴァーナといったカヴァーを揃え、ジャズの洒脱さをエッセンスにしたブラック・ミュージックの発展形といえるモダンな世界観を創り上げている。

 ロバートのピアノは個性的な客演陣との舞台を支えることだけに専心するかのごとく謙虚だが、その芯は太く浸透力に溢れる。その“静かなる衝撃”を体感せずに、ブラック・ミュージックの“現在”は語れまい。

Jun 04 ,2012 UP (Baseball Mania)

1. Lift Off/Mic Check (featuring Shafiq Husayn) 2. Afro Blue (featuring Erykah Badu) 3. Cherish The Day (featuring Lalah Hathaway) 4. Always Shine (featuring Lupe Fiasco & Bilal) 5. Gonna Be Alright (F.T.B.) (featuring Ledisi) 6. Move Love (featuring KING) 7. Ah Yeah (featuring Musiq Soulchild & Chrisette Michele) 8. Consequence Of Jealously (featuring Meshell Ndegeocello) 9. Why Do We Try (featuring Stokely Williams) 10. Black Radio (eaturing Mos Def) 11. Letter to Hermoine (featuring Bilal)  12. Smells Like Teen Spirit


■Mike Winans/MY OWN GENRE
[ 2011 ] DOC ROC ENTERTAINMENT

 ミシガンのゴスペル名家“ワイナンズ”の一員、マイク・ワイナンズのソロ・デビュー作。おばのヴィッキー・ワイナンズの2003年作""Bringing It All Together""を制作し、Bad Boyレーベルと契約。クリス・ブラウンやニュー・エディション、ケイス、ミッシェル・ウィリアムス、そして従兄で同じくBad Boyでパフ・ダディの右腕となったマリオ・ワイナンズらのヒットを手掛けた彼がようやく表舞台に登場した。

 従兄マリオがBad Boy色とゴスペルを融合させ成功したように、マイクもゴスペルを基盤に2000年前後の王道R&Bを提示。自身の音楽様式を宣言したようなタイトル曲""My Own Genre""をはじめ、スムースで優しい肌質のメロウ・ミディアムが揃った。肌身に溶け込むような芳醇な歌唱が時の流れを緩やかにする。なかでも“Progress Report""は白眉。

 シンプル・イズ・ザ・ベスト。R&B本来の旨味を抽出した良質作だ。

Jun 14 ,2012 UP (Baseball Mania)

1. My Own Genre 2. Turning The Page 3. What's Not To Love 4. Rumor Has It 5. Dancing On Me Like That 6. Who's Got A Heart 7. First Day Of Spring 8. I Apologize(ft. Leah Plummer) 9. Party Til The A.M. 10. Good Love 11. Progress Report 12. Still There 13. Let The Past Go 14. Feel(ft. Stephanie Winans)


■Eric Benet/The One
[ 2012 ] Jordan House

 かつて松坂大輔がプロ初登板で勝利した後に「自信が確信に変わった」と述べたが、同様にエリックも自身の音楽的志向に大いなる確信を持ったのではないか。ソロ・デビューから所属していたワーナーを離れてラスト・ネームを冠した「Jordan House」レーベルを立ち上げたのは、そのような思いからに違いない。

 前々作『Love & Life』から顕著になった70年代ソウルをルーツとした作風は本作でも堅持。伝えるべき良質の音楽とは何かをしっかりと提示している。波しぶきのようにファルセットが押し寄せる“Sometimes I Cry”の後継“Real Love”は妻マニュエラへ送るラヴ・バラードで、“Muzik”では実娘インディアと再共演と家族愛を披露しつつ、ジャジーな“Come Together”ではメイクラヴ・モード全開と、“愛の伝道師”に恥じない作りとなっている。

 リル・ウェイン参加がトピックにだけに終わらない“Redbone Girl”やレゲエ、AOR調などにも着手し、間口も広げての今様ソウルを実践。その信念は見事というほかない。

Jun 22 ,2012 UP (Baseball Mania)

1. Harriett Jones 2. News For You 3. Real Love 4. Runnin 5. Red Bone Girl featuring Lil Wayne 6. Waitin 7. Hope That It s You featuring Shaggy 8. Gonna Be My Girl 9. Come Together 10. Muzik featuring India Benet 11. Lay It Down 12. Here In My Arms (Lucia's Lullaby)


■Sy Smith/Fast and Curious
[ 2012 ] PSYKO RECORDS

 次世代ネオ・ソウルともいうべき傑作。前作『Conflict』からは約4年ぶりとなるが、その心地よいグルーヴにはさらに磨きがかかっている。

 コケティッシュなヴォーカルが映える洗練されたグルーヴを創り出す上質な楽曲が持ち味だが、本作で加えられたスパイスは“エレクトリック”。西ロンドンのブロークンビーツの旗手MdCL(Mark de Clive-Lowe)をプロデューサーに迎えたことが奏功し、よりコズミックなネオ・ソウル”として新たなクロスオーヴァー像を打ち立てている。

 サイの勝手を知る盟友ラサーン・パターソンが好演したビリー・オーシャンのカヴァー“Nights(Feel Like Gettin' Down)”やティーナ・マリー“Lovergirl”のリメイク“Teena”などのアレンジ曲も手抜きはなし。エレクトロとはいえ、2010年代USシーンの主流ともいえるユーロ・ポップ系のそれとは一線を画した、タイムレスなエレクトロ・ソウルだ。

Jul 02 ,2012 UP (Baseball Mania)

1. The First and The Curious 2. Truth 3. Personal Paradise 4. Find My Way 5. Nights (Feel Getting Down) feat. Rahsaan Patterson 6. Let The Rain Down 7. Teena (LoverGirl Syberized) 8. The Ooh to My Aah 9. The Primacy Effect 10. Messages From The Stars 11. People of the Sun


■Sam Ock/SIMPLESTEPS
[ 2011 ] GOONTRAX

 ギャップ”はときに印象を有利に働かせるが、彼の歌声を聴いた後はそれ以上の衝撃を受けるのではないか。

 サム・オックは米・メリーランド州在住のコリアン・アメリカン。ふくよかで微笑ましい顔立ちのどこにでもいそうな大学生だが、一聴すれば、実にソウルフルで慈愛に満ちた歌唱力の持ち主だと感歎するはず。さらに、作曲、プログラミング、楽器もこなすマルチな才能にも驚くに違いない。

 和やかだが情感湛える旋律やトラックには、繊細な機微が溶け込む。派手さより流麗な移ろいを意識したようなジャジィ・ヒップホップ風の楽曲は、nujabesあたりの影響も。日本の関心もあるのか“Green Shade”では冒頭とラストに日本語を語る。歌唱スタイルはブルーノ・マーズにも譬えられるが、音楽への拘りはメイヤー・ホーソーン的ともいえる。どちらにせよ、美しいものを細やかに伝える感覚は、彼ならではだ。

 日本の四季の移ろいにも似たソウル・ポップス。これがファーストだというのだから、その伸び白は計り知れない。

Jul 09 ,2012 UP (Baseball Mania)

1. Rollercoaster 2. Love 3. Beautiful People 4. Pieces feat. Kero-One 5. Green Shades 6. Tenshi 7. Little Light 8. Simple Steps 9. There Will Be 10. Ms. Instrumental 11. Home 12. In Remembrance 13. Love - re:plus remix-


■Beverley Knight/SOUL UK
[ 2011 ] HURRICANE

 デビュー15年以上を経て辿り着いたのは、母国そして自身の音楽的ルーツでもあるUKソウル/R&Bを見つめ直すこと……。英国の国民的シンガー、ビヴァリー・ナイトの7作目のスタジオ・アルバムは、80~90年代の“UKソウル”への回帰の旅となった。

 UKのブラック音楽といえば、移民などの民族的背景もあってか、洗練されたなかにもどこか陰影を帯びた郷愁的な感情に訴えるものが特色だが、ここで選ばれた楽曲も多分に漏れずUKらしいもの。ソウルIIソウル、ジャミロクワイ、ヤング・ディサイプルズ、オマーといった定番といえるものから、ジュニアによるダンス・クラシックス“Mama Used To Say”やジョージ・マイケルによるソウル“One More Try”など、ジャマイカ系移民の厳格な親を持ちゴスペルを拠りどころにしてきた彼女ならではの解釈で“UKソウル”への愛着と感謝を伝えている。

 UKに根付くソウルを“今様”として導き出した、傑作カヴァー集だ。

Jul 11 ,2012 UP (Baseball Mania)

1. Fairplay 2. Southern Freeez 3. Mama Used To Say 4. Say I'm Your Number One 5. When You Gonna Learn 6. Apparently Nothin' 7. There's Nothing Like This 8. Don't Be A Fool 9. Always and Forever 10. Round and Around 11. Cuddly Toy 12. Damn 13. One More Try


■Jeff Bernat/The Gentleman Approach
[ 2012 ] P-VINE RECORDS

 「名は体を表わす」ような紳士的なもてなしが導くメロウな空間。エスコート役はネヴァダ州出身のフィリピン系アメリカン、ジェフ・バーナット。スティーヴィー・ワンダーやジョーらのカヴァーを動画にアップし、無料配信などを通じて知名度を高めた20代前半のシンガーソングライターだ。

 まるでおとぎの国へと連れ出したようなマジカルなイントロの自己紹介的小品“Bonjour”からはじまり、60、70年代のソウルへの回帰を念頭においたようなヴィンテージ感覚溢れる世界へといざなう。とはいえ決して古くさくなく、どこか都会的な艶やかさを帯びているのが特色。心優しく寄り添う“Girl At The Coffee Shop”“Call You Mine”や、ビリー・ホリデイを引用した可憐で麗しい“If You Wonder”など、古きよき時代のシャレたモノクロ短編映画集のようだ。

 ミュージック・ソウルチャイルドをさらにシャイにしたような、母性をくすぐる声質も魅力。スタイリッシュで安らぎも得られる、ソウルを未来へ繋げるラヴ・レターだ。

Jul 23 ,2012 UP (Baseball Mania)

1. Boujour (intro) 2. Cool Girls 3. Just Vibe 4. Doesn't Matter 5. My Dear 6. Ms. Seductive 7. Girl At The Coffee Shop  8. If You Wonder 9. Call You Mine f/ Geologic 10. Groovin' 11. Moonlight Chemistry 12. With Love f/ Mosaek


■SWV/I Missed Us
[ 2012 ] Ent. One Music

 90年代ガールズR&Bヴォーカル・グループの代表格、SWVの約15年ぶりの復活作。97年の解散後、ココはゴスペル作を発表するなどソロ活動を継続し、再結成を報じた2005年以降にはSWVとして来日公演も果たしてはいた。だが、新作となれば話は別。不安もあったが、蓋を開けてみれば、気持ちいいほど当時のまま。会心のカムバックとなった。

 冒頭のミッド・ダンサー“Co-Sign”から素晴らしきSWVサウンドが興奮を呼び起こす。女性の強さを示すような凛とした輪郭と気品に満ちた上質感があいまったあの感じ。90年代の薫りを大いに吹き込ませた良質R&Bは、当時のリスナーのツボを押さえるのはもちろん、2012年産としても見事に輝きを放つ。

 どこかメアリー・J.ブライジ“Just Fine”を想わせる“Do Ya”などを聴くにつけ、“復活が思い出だけで終わるほど私たちはヤワじゃないわ”などといっているようで貫禄も充分。時代遅れだと軽んずるなかれ。本作に漲る躍動は、いまの時代をも凌駕するはずだ。

Jul 26 ,2012 UP (Baseball Mania)

1. Co-Sign 2. All About You 3. Show Off Feat. A.X 4. Everything I Love 5. Do Ya Feat. Brianna Perry 6. The Best Years 7. I Missed Us 8. Better Than I 9. Keep You Home 10. Time To Go 11. Use Me 12. Love Unconditionally 13. If Only You Knew


■Estelle/All Of Me
[ 2012 ] Atlantic

 自己顕示の仕方も人それぞれだが、相手に寄り添いながらも存在感を放つ、そんな柔軟性を備えるのがエステルだ。カニエ・ウェストを迎えた“American Boy”で米の注目を浴びたUK出身のシンガー/ラッパーの3枚目には、時流の波に乗りながら独創的な解釈でR&Bを示したエステル的ソウルが詰まっている。

 クリス・ブラウン&トレイ・ソングスやリック・ロス、ジェリー・ワンダやクエストラヴらタイムリーな客演・制作陣の手を借りながらも、その豪華な膳立てに頼り過ぎない。個性同士がぶつかる寸前の絶妙な距離感で自身を輝かせる、引き算的なセンスには感心するばかりだ。

 とはいえ、主役を譲る節は全くなし。むしろ、ユニークな抑揚と引きずるようなフロウで畳みかける“Speak Ya Mind”やニーヨ制作のジャネル・モネイ客演曲“Do My Thing”などでは、奔放さを存分に発揮。UKらしい陰影を湛えた独創的な視点で構築された世界には、彼女の矜持が表われている。

Aug 03 ,2012 UP (Baseball Mania)

1 The Life 2 International (Serious) / Feat. Chris Brown And Trey Songz 3 You And I 4 Love The Way We Used To 5 Cold Crush 6 Don't Break It 7 Break My Heart (Feat. Rick Ross) 8 Thank You 9 Who We Are 10 Wonderful Life 11 Found My Way… 12 Back To Love 13 Blue Skies 14 Speak Ya Mind 15 Do My Thing (Feat. Janelle Monae)


■YOSHIKA/World
[ 2008 ] Grand Trax

 アル・クーパーのカヴァー“JOLIE”やm-floとのコラボ“let go”で話題となったYOSHIKAの2枚目のフル・アルバム。R&Bへベクトルを向けたソロ第1弾とは異なり、本作はオーガニックなピュア・ポップ作となった。

 Curly Giraffe作曲“Swim in the Stars”や菅野よう子作曲“きみのなかで”などのトピックもあるが、重心は彼女自身の心情が隅々まで詰まったセルフ・ポートレイト的な作品ということ。結婚・出産を経て、女性として人間としての存在を問い導き出した、彼女なりの人間像がここにはある。

 文字通り弾んだ“Trampoline”やジャジィなポップ“Beautiful Woman”といったアップ系もあるが、多くは浸透力のあるオーガニックなミッド。歌唱もシルキーだが、ただ優しく包み込むだけではなく、素肌で接する生々しさも。着飾る前の本来の美しさに気づいてほしいというメッセージなのだろう。

 表現力や訴求力溢れる瑞々しいバラード“Touch”は絶品だ。

Aug 09 ,2012 UP (Baseball Mania)

1 はじめに 2 World 3 Swim in the Stars 4 In My hand 5 ただそれだけのこと 6 きみのなかで 7 Trampoline 8 Don't let me be free 9 Can't be your friend 10 Touch (Album version) 11 Beautiful woman 12 I will Always


■MONDAY MICHIRU/NEXUS
[ 2008 ] Knife Edge

 喜怒哀楽を激しく露にしているのに、力まずに聴けるのはなぜだろうか。そんな思いが脳内に浮かんでは消える。クラブ・ジャズ・シーンで高い人気を誇るマンデイ・ミチルの14枚目のオリジナル・フル・アルバムは、人間の深層心理と繋がり(=“NEXUS”)を映し出してみせた一枚だ。

 ファンタジーと現世、社交性と内向性、享楽と憂鬱……。一見異なると思われるが実は表裏一体な世界観を、ディープやモダン、ムーディ、ソウルフル、キャッチーなどさまざまな色彩で描いていく。楽曲が本来持つべき姿を糸を手繰るように捜し求め、意図した着想と制作陣を得たことは素晴らしい“連鎖”だったようで、歌唱からもその痛快さが感じられる。感情に素直に委ね、人間が持つ感受性に訴えたことが、無意識に自身のグルーヴに反応したのかもしれない。 

 ジャズ・トランペッターで夫のアレックス・シピアギンはもちろん、旧知のKyoto Jazz Massive(“Sands Of Time”制作)らの仕事ぶりも光る。“ON&ON”では息子のニキータも参加。

Aug 16 ,2012 UP (Baseball Mania)

1. INTERLUDE 2. EPIPHANY 3. YOUR EYES 4. CANDY 5. SOMETIMES 6. SUITE 610 7. GENETIC IMPRINTS 8. THAT’S NOT ME 9. WEAK 10. SANDS OF TIME 11. ONE 12. ON & ON 13. SANDS OF TIME (JAZZTRONIK REMIX) (BONUS TRACK)


■Crude Reality/Exterior World
[ 2005 ] starfish RECORDINGS

 Crude Reality……あまり馴染みのない名前かもしれないが、80年代にNOKKOを擁してシーンを席巻したレベッカのキーボーディスト、土橋安騎夫といえばわかるだろうか。彼の別名義による2005年作は、ハウスやブレイクビーツを土台にしながらも、洒脱と雑多性に富んだものとなった。レベッカはロック・バンドながらそのリミックス曲はクラブ的なアプローチなものが少なくなかったことを考えると、このような活動も合点がいく。

 トライバルな生楽器をシンセと組み合わせたサウンドも多いが、装いはどこまでも都会的。一貫してラウンジ感やアーバンな色彩で満たしているのは、ICEやCOSA NOSTRAといういわゆる“渋谷系”のヴォーカリストを迎えた曲を配したのも大きな要因の一つ。特にICEの国岡真由美をフィーチャーした冒頭曲“Into My Brain”は、同じく宮内和之の手も借りて(というよりもろにICE印サウンド)、享楽と恍惚へいざなってくれる。

 80年代の良き面影を忍ばせた、洗練されたハウス・アルバムだ。

Sep 04 ,2012 UP (Baseball Mania)

1. Into My Brain 2. Stay or Leave 3. Mindscope 4. Change Of Heart 5. Octagon Planet 6. Do you want slack off in your life? 7. Future Telegram 8. Deep Terrain 9. Stay or Leave Francois K.and Rob Rives Mix 10. Octagon Planet Nils Hess Mix


■Elle Varner/PERFECTLY IMPERFECT
[ 2012 ] RCA

 ポスト・アリシア・キーズ”とのキャッチコピーで話題のR&Bシンガー、エル・ヴァーナー。両親がミュージシャン(共にバイ・オール・ミーンズ)で、アリシアを発掘したチームに見出されてのデビューゆえ、冒頭のフレーズらしい。

 ただ、個人的にはJ・コールを迎えた“Only Wanna Give It To You”や“Leaf”“Oh What A Night”などで耳にするハスキーな声質は、どちらかというとクリセット・ミッシェルに近い気もする。スカートの裾をヒラヒラさせて“ウフフ”……といたずらっぽく笑うような、可憐さと茶目っ気ある歌唱がそう感じさせるのか。両親は洗練と洒落を兼ね合わせたソウルフルな雰囲気を醸し出していたが、エルはその素養に加えて、なかなか肝の据わった歌唱で楽曲も幅も広い。

 大型新人というとその後大衆歌手化するパターンも少なくないが、“Only Wanna Give It To You”路線のヒップホップ・ソウル曲調で勝負してもらいたい。そう願いたい逸材だ。

Sep 18 ,2012 UP (Baseball Mania)

1 Only Wanna Give It To You 2 Refill 3 Sound Proof Room 4 I Don’t Care 5 Not Tonight 6 Leaf 7 Oh What A Night 8 Stop the Clock 9 Welcome Home 10 Damn Good Friends 11 So Fly


■SATOSHI TOMIIE/FULL LICK
[ 1999 ] SONY Associated Records

 ハウスをハウスの枠から解き放った衝撃的な一枚。

 世界的なトップDJのひとり、サトシトミイエ(富家哲)のオリジナルとしては初となるアルバムは、ほの暗いムードが漂うディープな“DISK YIN”と端麗な輝きを持つ歌モノ中心の“DISK YANG”の2枚組。2001年にシングル・カットされた“LOVE IN TRAFFIC”は、さまざまなリミックスを生んで欧州でもヒットした。

 スピリチュアルともインダストリアルともいえる陰サイドとエキサイティングな陽サイドという一見異なる世界観を、実は表裏一体なんだと感じさせる巧みな構成が見事。陽サイドではダイアン・シャーラメインを迎えた歌モノ曲が中心だが、なかでも“INSPIRED”から“COME TO ME”の流れは、ピアノやストリングス・アレンジのハウス好きにはたまらない興奮を味わえるのではないか。

 実験的な側面を持ちながらも、日本人的な“和”の美意識を崩さない、懐の深いハウス・アルバムの傑作といえる。

Sep 25 ,2012 UP (Baseball Mania)

DISK YIN: 1 BIG BANG 2 BANGING TRAFFIC(INTERLUDE) 3 LOVE IN TRAFFIC 4 DARKNESS 5 UP IN FLAMES 6 SNEAKY ONE 7 PROHIBETED ONE(INTERLUDE) 8 SECRET PLACE 9 FLUTE&FLAVA DISK YANG: 1 INSPIRED 2 COME TO ME 3 HEAVEN 4 SINCERITY(PART1&2) 5 COME TO ME(LAMENTO TAKE2) 6 BLACK OPAL


■BONNIE PINK/Chasing Hope
[ 2012 ] Warner Music Japan

 どこか葛藤や悩みを拭いきれず靄がかった作風からようやく抜け出した……そう感じさせる2012年作。

 元来、波が出やすく、大ヒット“A Perfect Sky”以降、行くべき道を模索していたように見えた彼女。ベスト盤以降はトーレ・ヨハンソンら馴染みの面々に頼らずにやや内省的な作品が続いたが、デビュー15周年に発表した『Dear Diary』できっかけをつかんだようで、約2年後の本作は、その盟友たちの力も借りて、タイトルよろしく希望へ向かって一心不乱に走り出すようなピュアでポジティヴなものに。爽快なグルーヴが駆ける“ナツガレ”や好奇心溢れるロック“Bad Bad Boy”あたりは、ツカエていたものが外れた解放感が伝わる。また、“My Angel”“Tiger Lily”などに顕著な震災後に強まった生への衝動も。どれもネガティヴに陥らない活力が漲っている。

 過去に囚われ過ぎず、今をしっかり踏みしめ、行くべき未来を見定め始めた彼女。長い充実期が予感できそうだ。

Oct 02 ,2012 UP (Baseball Mania)

1 Stand Up! 2 ナツガレ 3 Mountain High 4 Bad Bad Boy 5 街の名前 6 Animal Rendezvous 7 My Angel 8 Tiger Lily 9 Baby Baby Baby 10 Don’t Cry For Me Anymore 11 冷たい雨 12 Change


■Cynthia Jones/Journey of Soul
[ 2011 ] Kingdom Records

 “ブロロロ……”というエンジン音が鳴り響く“Motorcycle”から幕を開ける、ノース・カリフォルニア出身のネオソウル/ゴスペル・シンガーの2011年作。

 バイクに乗った(?)シンシアの“ソウルの旅”は、“Universal Praise”“Revival”などのゴスペル曲もあるが、ほぼR&B作といっていい。前作『Gotta Soul』ではエリカ・バドゥを気取った佇まいが印象的だったが、本作もエリカやジル・スコットあたりを思わせる雰囲気を漂わせる。シンシアのよさは圧倒的な声量で大仰に押しまくるのではなく、ゴスペルで培った伸びやかなパワー・ヴォーカルを持ちながらも、しっかりと曲風に合わせてコントロールできるところ。オーガニック・ソウルやスムース・ジャズ、グルーヴィなアップなど、どの曲にもしっくりくるのはその匙加減のよさが大きい。実にバランスよく、最後まで飽きさせない。

 “ネオソウル×ゴスペル”スタイルの隠れた良作だ。

Oct 10 ,2012 UP (Baseball Mania)

1 Motorcycle 2 Journey of Soul (Intro) 3 Unconditional 4 Lord I Need You Now 5 Universal Praise 6 He Loves Me 7 Conversation 8 Revival 9 Child Of The King 10 God's Been Good 11 Ocean 12 What A Mighty God 13 Midnight 14 Happy Birthday 15 Walking 16 Judah Jam 17 Got To Be There 18 L.O.V.E. 19 Journey Of Soul


■MAROON5/Overexposed
[ 2012 ] A&M / Octone

 デビュー作『ソングス・アバウト・ジェーン』発表の10年前以降、ロックやソウル、ファンクといったジャンルを横断した独自のサウンドを持つバンドとしての認知度が高い彼ら。意地悪な言い方をすると、多彩なジャンルや要素の導入から、常に「ポップなのか、ロックなのか」という類の問いには座りが悪かったところもあったろう。だが、この4作目は実に爽快なポップ作としてリスナーを刺激したに違いない。“露出超過”を意味するタイトルも、決してネガティヴではなく、「もっと俺たちのポップを見てくれ」と言わんばかり……とするのは考えすぎか。

 マックス・マーティンやシェルバックのスウェーデン系をはじめ、エレクトロやダンスを得意とする制作陣に重心をおいてはいるが、核心はポップ・バンドとしてのキャッチーなミュージック。それがアダムの人懐っこいヴォーカルと融合し、モダンでグルーヴィなポップ作を創り上げたのだ。

 今後の飛躍のためのヒントを獲得した、その端緒になりそうな一枚。クリスティーナ・アギレラ客演のヒット“Moves Like Jagger”などを含むデラックス版がオススメ。

Oct 17 ,2012 UP (Baseball Mania)

1 One More Night 2 Payphone feat. Wiz Khalifa 3 Daylight 4 Lucky Strike 5 The Man Who Never Lied 6 Love Somebody 7 Ladykiller 8 Fortune Teller 9 Sad 10 Tickets 11 Doin' Dirt 12 Beautiful Goodbye 13 Wipe Your Eyes 14 Wasted Years 15 Kiss 16 Moves Like Jagger 17 Payphone (Cutmore Remix) 18 Payphone (Supreme Cuts Remix)


■Usher/Looking 4 Myself
[ 2012 ] RCA

 『コンフェッションズ』=“告白”からの区切りをつけようとした野心作。

 従来の純粋なファンは訝しく思ったかもしれない。ディプロによるダウンビートを効かせた“Climax”やマックス・マーティン制作のポップ・ダンサー“Scream”といったシングルが続けば、「アッシャー、お前までもエレクトロに走らなくても……」という落胆も聞こえてきそうだ。

 だが、それは早計だと待ったをかけたい。確かに前述のディプロらエレクトロ勢は大きなトピックだが、アーバン路線に加え、サラーム・レミの重々しいビートが支配する“Sins Of My Father”や時代をオールディーズへと巻き戻したようなファレル節全開の“Twisted”など多様な曲調を採用。世界的な視点から今を知る彼だからこそ、ジャンルを超越した全世界訴求型の作風へと導いたのだ。

 過去の名声に留まらず、常に進化すべき存在として自己を見つめた一つの挑戦。リスキーだが自ら厳しい道を進む心意気は見事だ。その結実は次作以降となろうが、それを知るためにも看過はできないはずだ。

Oct 23 ,2012 UP (Baseball Mania)

1 Can't Stop Won't Stop 2 Scream 3 Climax 4 I Care For U 5 Show Me 6 Lemme See 7 Twisted 8 Dive 9 What Happened To U 10 Looking 4 Myself 11 Numb 12 Lessons For The Lover 13 Sins Of My Father 14 Euphoria 15 I.F.U. 16 Say The Words 17 2nd Round 18 Hot Thing


■Perfume/Perfume Global Compilation LOVE THE WORLD

 ユニバーサル移籍前、徳間在籍時発表の楽曲のなかから、海外向け入門編としてセレクトされたコンセプト・アルバム。2007年“ポリリズム”以降、爆発的なスピードでテクノポップ・ユニットとして人気を...more


※「3055.jp」にて詳細リンクが非表示となっていたため、全文取得不可能でした


■Angie Stone/Rich Girl
[ 2012 ] Saguaro Road Records

 ヴェテランR&B/ソウル・シンガーの6作目は、やはりネオ・ソウルが充溢した魅惑的な一枚となった。

 老舗レーベル“STAX”からの前作『Unexpected』ではオートチューンを使うなど流行を採り入れてはいたが、内実は安定したアンジー・ソウルを披露した良作だった。だが、売上げが芳しくないと思われたのか(あるいは、バイクにまたがった鼻息荒そうなジャケが良くなかったか…苦笑)、本作は移籍したSRR Recordsからのリリース。少なからずショックもあるかと思いきや、どこから出そうと私の音楽は不変と言わんばかりの、心身共に懐の大きなところを見せてくれた。

 スムースなミディアムを軸とした定番ネオ・ソウル作だが、“Backup Plan”“Livin' It Up”などのキャッチーでグルーヴィンなアップも提供。ツボを外さない心遣いが嬉しい。

 斬新でも新境地でもないが、古臭くもないし飽きもこない。季節や気候に合わせてスパイスや調理法をアレンジした上質な一品料理といえるか。じっくりと味わいたい。

Nov 06 ,2012 UP (Baseball Mania)

1 Intro: Real Music 2 Do What U Gotta Do 3 Backup Plan 4 Proud of Me 5 First Time 6 Guilty 7 Interlude (By Malcolm-Jamal Warner) 8 Alright 9 Livin' It Up 0 Rich Girl 11 Right in Front of Me 12 I Can’t Take it 13 Push N' Pull 14 U Lit My Fire 15 Sisters


■Dwele/Greater Than One
[ 2012 ] Ent. One Music

 自己主張を押しつけず、自然と豊かな音の波へと導く。寓話「北風と太陽」でいえば、太陽のようなアプローチだ。

 デトロイト出身のR&B/ソウル・シンガーの5作目は、電子音のアクセントと生音のなめらかなタッチが優れた調和を見せた、スウィートでアダルトな雰囲気が最大の魅力。圧巻な声量や音圧こそないが、知らぬ間に心身を委ねているような、スムースな浸透力が素晴らしい。溶けるようなファルセットや快感のツボをくすぐるようなヴォーカルは、まったく力みを感じさせない。“自然体の美学”とでもいわんばかりだ。
 
 これだけならよくあるネオ・ソウル作と捉える人もいるかもしれないが、彼が非凡なのは、チラリと遊び心や“ヒネリ”を仕込んだ作風にもある。“Takes22Tango”“Swank”あたりの”変則的なトラックをさらりと泳いでのける柔軟性などもそう。以前、カニエ・ウェストが客演に招いたというのも頷ける。

 掛け合いによる口説きソング“PATrick RONald”などでは茶目っ気も見せる、シャレた一枚だ。

Nov 19 ,2012 UP (Baseball Mania)

1 Greater Than One Less Than Three 2 Going Leaving 3 Takes22Tango 4 What You Gotta Do (feat. Raheem DeVaughn) 5 What Profit 6 Obey 7 This Love 8 Must Be (feat. J. Tait, L’Renee & Black Milk) 9 Swank (feat. Monica Blaire) 10 PATrick RONald (feat. Monica Blaire) 11 Special 12 Love Triangle 13 Frankly My Dear (I’m Bennett I Ain’t Innit)


■BLACKKURRANT/URBAN SOUL
[ 2012 ] P-VINE RECORDS

 なんともベタなタイトルと思いながら、冒頭の“Simplify”を聴くと、これが“Superstition”を想起せざるを得ないスティーヴィー・ワンダー曲風。だが、少々胡散臭さを感じながら耳を貸し続けるうち、ソウルの上澄みをすくっただけではない意外と懐の深いアーバン・サウンドが待っていた……。南アフリカ・ケープタウンを拠点に2005年に結成した5人組のデビュー作は、アーバンの名に恥じない上質と清爽を兼ね備えていて、実に痛快だ。

 本国でのヒット“Today”や“Love The Way”はインコグニート路線のアシッド・ジャズ、スムースなファンク“Scandalous”はセルフ・コンテインド・バンド系、“She'll Never Know”“Get Naughty”“Nobody Knows”はネオ・ソウル~90年代以降R&Bと、グルーヴ・チューン好きのツボを押さえた構成。うま味を嗅ぎ分けたセンスは、なかなか侮れない。

Nov 29 ,2012 UP (Baseball Mania)

1. SIMPLIFY (featuring Mingus) 2. SCANDALOUS 3. TODAY 4. SHE’LL NEVER KNOW 5. FOR YOU (interlude) 6. IN LOVE WITH YOU 7. NOBODY KNOWS 8. LOVE THE WAY (featuring Mingus) 9. GET NAUGHTY (featuring DK) 10. BLINDED BY GREED 11. BK HAS LEFT THE BUILDING (interlude) 12. BLINDED BY GREED (Caramel Remix) (Bonus Tracks for Japan)


■AISHA/I,Shout!!!
[ 2012 ] アリオラジャパン

 久しく出くわさなかった“本物”がようやく現れた、という感覚が身体を貫いた。スティーヴィー・ワンダー作品でトロンボーンを演奏する父が「可愛いアイシャ」にちなんで名付けたという、黒人の父と日本人の母との間に生まれたAISHAのファースト・アルバム。

 デビュー前にグールーに見初められ“It's On You”で共演したとかランDMCのDMCが認めたという煽り文句もあるが、正直それはどうでもよくて、とにかく迫力と繊細を兼ね備えたヴォーカルが素晴らしい。一聴してその圧倒的な存在感を植え付けられたのだ。

 サウンドも“Fallin' 4 U”“I Wanna Rock You”“MaMa Never Told Me ”といったグルーヴィなファンクやヒップホップ・ソウル風“ELECTRICITY”などを軸に、“黒さ”を根にした付け焼き刃でないR&B/ヒップホップを実践している。

 日本のどこか生ぬるいR&Bシーンを変えられる救世主として、期待大な存在だ。

Dec 17 ,2012 UP (Baseball Mania)

1. Fallin’ 4 U feat.DMC 2. I Wanna Rock You 3. Nothing 4. Red & Blue 5. ELECTRICITY 6. Interlude 7. Sing for you 8. “houston” 9. この声枯らして feat.CHEHON 10. Vanilla☆Shake 11. MaMa Never Told Me feat.RICHEE & SIMON  12. Heartbeat 13. Fly 14. It’s On You feat.AISHA 15. Fallin’ 4 U feat.DMC [M2J MIXXX] 16. Fly [DJ Mitsu the Beats remix] 17. I Wanna Rock You [mabanua Remix] 18. Love Again [DJ Hasebe Remix]


■安室奈美恵/Uncontrolled
[ 2012 ] avex trax

 駆け引きなどどこ吹く風。独走態勢に入り、もはや自身と闘うマラソンランナーのような貫禄さえも感じさせる10作目。

 圧倒的な声量や図抜けた表現力があるわけではないが、常に質の高い作品を送り込む彼女。自身の個性をまったく削がずに楽曲ごとに絶妙な加減でフィットする。それはまるで、ゲームによって絵札にも任意のカードにもなれる“ジョーカー”的な変幻自在さといってもいい。

 中心となるダンス・チューンは、装飾を剥ぐとビートは変則的でなく、むしろ単調なビートにも思えるくらい。だが、そこでヴォーカルを前面に押し出して曲にアクをつけるのではなく、主張が強いトラックに反発せず、むしろそのパワーを利用したヴォーカル・ワークで安室色に染め上げていく。

 楽曲制作はNao'ymtとT-SKが4曲ずつで核。そこへ大沢伸一やT.kura&michicoらが加わる鉄壁な布陣(特にT.kura夫妻の安定感といったら!)。しばらく彼女の牙城は崩れそうになさそうだ。

Dec 26 ,2012 UP (Baseball Mania)

1. In The Spotlight (TOKYO) 2. NAKED 3. GO ROUND (’N ROUND ’N ROUND) 4. Sit! Stay! Wait! Down! 5. Hot Girls 6. Break It 7. Get Myself Back  8. Love Story 9. Let’s Go 10. SINGING “YEAH-OH” 11. Fight Together 12. ONLY YOU 13. Tempest


◇◇◇

※「近況注意報 1105 音楽篇(2)【3055】」へ続く

















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近況注意報 1105 音楽篇(2)【3055】

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  音楽レビューサイト「3055」に寄稿したレビューの第2弾です。

◇◇◇

≪2013年掲載分≫

■BRANDY/TWO ELEVEN
[ 2012 ] RCA

 4年ぶりの復帰作。さまざまな“いわく”がつく波瀾を経ているゆえ、思い入れもひとしおだろう。人身事故を起こしどん底を味わったのちエピックへ移籍。だが、前作『HUMAN』が不振で約1年で契約解除。家族ドキュメンタリー番組に出演して公私を晒しながら、ようやくリリースにこぎ着けた。

 タイトルには、自身の誕生日と同時に敬愛するホイットニー・ヒューストンの命日を冠した。他界直前の“自分らしくトライし続けて”の助言をそのまま実践した力作だ。

 クリス・ブラウン客演の“Put It Down”や“Let Me Go”といったヒップホップ的アプローチへのトライが刺激的でおもしろい。だが、やはり本筋は原点回帰のクールなR&B。冒頭から“Never Say Never”を想起させる“Wildest Dreams”や“Slower””Without You”、坂本龍一ネタ楽曲など、派手さはなくとも(むしろ地味)適度な湿度で濡らす。どっぷりと回帰に浸り過ぎず、時流に迎合しすぎない。絶妙の線でまとめたこれぞR&Bな曲が揃った。

 カムバックを素直に喜べる一枚だ。

Jan 03 ,2013 UP (Baseball Mania)

1. Intro 2. Wildest Dreams 3. So Sick 4. Slower 5. No Such Thing As Too Late 6. Let Me Go 7. Without You 8. Put It Down 9. Hardly Breathing 10. Do You Know What You Have 11. Scared Of Beautiful 12. Wish Your Love Away 13. Paint This House 14. Can You Hear Me Now 15. Music 16. What You Need 17. Outro


■雅-MIYAVI-/SAMURAI SESSIONS vol.1
[ 2012 ] EMI Music Japan

 優れた才能を持つアーティストとのジャンルを超越したコラボ企画“SUMURAI SESSION”シリーズを始動させたのが2011年。そのコラボのひとまずの区切りとして2012年にリリースされたのが本作だ。

 エレキをすべて指で弾く独自のスラップ奏法を駆使して世界各地で注目を集めた雅-MIYAVI-が、本物のアーティスト(どうやら彼はそれを“サムライ・アーティスト”と呼ぶらしい)とガチンコ勝負。共演ではなく競演。だから、クレジットには“vs”の文字が並ぶ。
 
 それが最も凝縮されたのは第1弾シングルの“STRONG”だ。「お手並み拝見」とばかりに繰り出すスラップ奏法に、KREVAがしたり顔で高速ラップで応戦。それは真剣勝負の緊張のなかで鍔迫り合いを楽しむような、互いの力を認め合ったもの同士が作り出せる空間だ。

 KREVAとの“一戦”はヒリヒリしたものだが、そのスタイルばかりでないのが懐の深さと経験値。三味線の上妻宏光とフラメンコギターの沖仁を交えての“HA NA BI”の高揚感、H ZETT Mのピアノと創る多幸感など、先入観を軽く凌駕。聴き逃しは損と断言できる力作。

Jan 18 ,2013 UP (Baseball Mania)

1. GANRYU 2. STRONG 3. DAY 1 4. SILENT ANGER 5. PLEASURE! 6. HA NA BI 7. 祈りを


■Darnell Kendricks/Smooth Soul Cafe
[ 2012 ] REWIND RECORDS

 一口に“ソウル”といっても、なめらかな肌あたりからネットリと濃厚なものまであるが、本作はタイトルどおり前者のテイストを得意とするカリフォルニア出身のR&Bシンガー・ソングライターの2010年作。タイトルに“カフェ”と冠するも、いわゆるBGM的な機能としてさらりと耳の上を流れる“カフェ・ミュージック”とは異なり、あたりはやわらかだがジワジワと深く長く染み込む浸透性の高いスムース&メロウな楽曲群が揃っている。

 デビュー作『ストロベリー・レモネード』のタイトルしかり、これまでのアーバン&スムースなテイストはしっかりと継承、さらに精密度が高まった感さえある。それだけに楽曲の“軽さ”を不安視する人もいるかもしれないが、ブライアン・マックナイトが引き合いに出されるソフト・テナーの美声がそれを払拭。歌モノの魅力を存分に味わえる。

 聴後の清涼感は格別。アシッド・ジャズやネオ・ソウルあたりの好事家に薦めたい一枚だ。

Feb 06 ,2013 UP (Baseball Mania)

1. Smooth Soul Cafe Intro 2. Let's Run Away 3. Please Believe Me 4. Baby Don't Leave Me 5. Brand New 6. Baby Jane 7. So Much 8. After Dinner 9. After Dinner reprise 10. Still I Think of You 11. You Took My Loneliness 12. Joy 13. My Favorite Person 14. Good Love-Diggysim Remix


■AMP/Glory Songs
[ 2012 ] GOONTRAX

 2011年末にリリースされた『Simple Steps』が日本の好事家の間で話題となり、短期間に複数の来日を果たしたコリアン・アメリカン、サム・オック。彼がCL、ジェイ・ハンとともに組んだユニットが2012年末に発表したのが本作だ。

 “Faithful”や尺八の音を使った“Beauty”あたりはサム・オックのソロ作同様の和やかなムードが漂うが、他曲では電子的なアプローチやストリート感が強い作風も多く、3人の嗜好がバランスよく配されている。

 特徴的なのは、リード曲“People's Song”や後半からゴスペル風コーラスが加わる“See You in Heaven”などからもわかるように、非常にキリスト教的な詞世界だということ。本作は自主レーベルAnointed Music Productionsからのリリースだが、“Anoint”とは“聖油で清める”の意だ。

 宗教的な世界観という、日本人にはあまりピンとこない詞世界を除けば、すんなりと耳に沿うR&B/ヒップホップ作といえる。

Feb 27 ,2013 UP (Baseball Mania)

1. Amplify 2. No Other Place 3. People’s Song 4. Faithful 5. See You in Heaven 6. Wonderful 7. New Creation 8. Your Word 9. Shine 10. Hummingbird 11. Worthy Is The Lamb 12. Everywhere 13. Beauty 14. No Turning Back 15. You Lift Me Up 16. No Other Place - re:plus remix


■Miguel/Kaleidoscope Dream
[ 2012 ] RCA

 メキシコ系の父親とアフリカ系の母親を持つカリフォルニア出身のR&Bシンガーのセカンド・アルバム。前作『All I Want Is You』は多くの注目を浴びた印象はなかったが、このセカンドは2012年を代表とする一枚として好評を得た。

 ファンキーだがまどろみを誘うドローンとしたサウンドは、タイトルやジャケットよろしく万華鏡のように表情をくるくると変え、非常に独創的だ。プリンスやマックスウェルあたりのメロウな感覚に加え、スペイシーな要素などからはグラム・ロック的な雰囲気も散見される。そしてなにより特徴的なのは、先行シングル“ADORN”でも顕著なとおり“(ク)ゥワッ”という合いの手風の声だろう。ドレイクが出てきた時に感じたのと同様のユニークさと面白味が、スルメのようにジワジワと五感を支配していく。

 “トイレとお部屋に消臭力~”……ミゲルといえば消臭剤のCMで歌っていたポルトガル出身のガーレイロ少年というイメージも、このセカンドのヒットをきっかけに日本でも目が離せない存在へとなってほしいものだ。

Apr 01 ,2013 UP (Baseball Mania)

1. Adorn 2. Don't Look Back 3. Use Me 4. Do You... 5. Kaleidoscope Dream 6. The Thrill 7. How Many Drinks? 8. Where's the Fun in Forever 9. Arch & Point 10. Pussy is Mine 11. Candles in the Sun 12. Gravity 13. ...All


■Allen Stone/Allen Stone
[ 2012 ] Ato Records

 スティーヴィー・ワンダーとの邂逅が一人の白人ソウルマンを生んだ。ブルー・アイド・ソウル界に颯爽と現れた1987年米ワシントン州生まれのシンガー・ソングライター、2009年インディ作『Last To Speak』に続くセカンドで、メジャー1作目。

 ナードな容姿からメイヤー・ホーソーン的にも語られるが、父親が牧師でゴスペルが身近にあったというから、マニアならずとも“黒さ”への順応は当然か。世俗的な音楽を禁じるよう育つも、スティーヴィーと出会うやいなや貪るようにソウル・ミュージックへ傾倒したという。

 印象は、UK黒人シンガーのネイト・ジェームスとダリル・ホールの中間といった風。ややブルース色も見えるのは、ゴスペル影響下にあったからか。歌唱は安定していて、自身が愛した偉大なソウルに一目置き、2010年代ならではの高品位なレトロ/ヴィンテージ感を演出する。まだ奥底を見せてなさそうだし、今後に期待が持てそうだ。

Apr 15 ,2013 UP (Baseball Mania)

1. Sleep 2. Celebrate Tonight 3. What I've Seen 4. Say So 5. The Wind 6. Satisfaction 7. Contact High 8. Nothing to Prove 9. Your Eyes 10. Unaware 11. Satisfaction(Live At The Thoubador)


■Bilal/A Love Surreal
[ 2013 ] Ent. One Music

 ビラルは、フィラデルフィア出身のネオ・ソウル系シンガー・ソングライター。本作は2010年『Airtight's Revenge』以来の約3年ぶりのアルバムとなるが、にもかかわらず2001年からのキャリアで3作目とやや寡作である。

 近年ではジョイ・デナラーニが企画し、ドゥエレやトゥイートとともに参加した2008年のドイツ・ドレスデンでのコンサートや、盟友ロバート・グラスパー『ブラック・レイディオ』の客演(本作では“Butterfly”で共演)などで話題となっていたが、ようやく本腰を入れてのリリースとなった。

 プリンス系統のうねりのあるファンクをベースとしているが、ビラル独特の幻想的で神秘的なムードが全体を支配しているのが特色。オルタナティヴともサイケデリックともいえる要素もちらつくが、決して小難しい感じはなく、音数を少なめにしてしっかりとグルーヴを構築しているあたりは、奇才のなせる業か。

 派手さはなくとも深層心理をえぐる楽曲群が連なる、ユニークな世界観。既成概念を軽く超越したビラル流小宇宙は、実に刺激的でおもしろい。

Jun 04 ,2013 UP (Baseball Mania)

1 Intro 2 West Side Girl 3 Back to Love 4 Winning Hand 5 Climbing 6 Longing and Waiting 7 Right at the Core 8 Slipping Away 9 Lost for Now 10 Astray 11 Never Be the Same 12 Butterfly 13 The Flow 14 Outro


■MADFINGER/Another Chapter
[ 2013 ] P-VINE RECORDS

 UKソウルやレア・グルーヴ好きならまだしも、多くの音楽ファンにとって“アシッド・ジャズ”は懐古趣味の産物と片づけられるものかもしれない。だが、そんな先入観を吹き飛ばしてくれそうなのが、2011年にこの3作目(日本盤は2013年)を発表した、1980年前後生まれで構成されたチェコ・プラハ産のソウル・バンド。東欧の地で、“今”のバンドとしてアシッド・ジャズを鳴らしている。

 アシッド・ジャズ、元を辿ってジャズ・ファンクを奏でる面々は多少なりともスティーヴィー・ワンダーの影響がみてとれるが、“As”のカヴァーや本作からリード・ヴォーカルを執るマーティン・スヴァテックが(偶然にも)盲目ということからも近似性は当然か。

 音はUK直系、つまるところ“若々しい”インコグニート風か。ただ、東欧的なニュアンスを匂わせていた前作までの素地もあってか、UK独特の陰影や熟成した音というよりも清爽や新鮮さが前面に出ている。

 ムーヴメントとしてではなく、あくまでも普遍的・大衆的にアシッド・ジャズを捉えた注目作といえる。

Jun 14 ,2013 UP (Baseball Mania)

1. Still 2. Another Chapter 3. Are You Ready 4. I'm Wondering 5. Try 6. Stop It 7. Bittersweet 8. You Remind Me 9. This Goes Out 10. The Last Song 11. Summerjam Party 12. I'm Movin' On 13. As


■The Brand New Heavies/Forward
[ 2013 ] Universal UK

 2013年、“前進”を掲げてザ・ブラン・ニュー・ヘヴィーズ(BNH)が帰ってきた。初期ヴォーカルのエンディア・ダヴェンポートも、わずか3曲とはいえ、重要曲のブギー・ファンク風“Sunlight”“Addicted”などでリード・ヴォーカルを執り、ファンを安堵させた。

 思えば、2011年の来日公演では急遽エンディアが来日をキャンセル。代役シンガーによる新生BNHでのステージとなり、ファンをやきもきさせたが、やはり“腐れ縁”なのか。ゲストという形だが、何事もない風でエンディア客演曲を発表。再びファンの気持ちを高ぶらせた。

 冒頭のインストからBNH節全開。だが、懐古に固執せず、ドーン・ジョセフら新たなヴォーカルを迎えて、今だからこそなし得る近未来志向のアシッド・ジャズ/レア・グルーヴを探求。これまでの礎に新鮮なエッセンスを加えている。

 “アシッド・ジャズ・レコード”25周年のタイミングはあくまでも偶然。普遍と先端の均衡を巧みに操りながら、時代の向こうをも見据えたグルーヴを奏でている。

Jul 01 ,2013 UP (Baseball Mania)

1. Forward 2. Sunlight (Full Length Heavies Mix) 3. Do You Remember 4. On The One 5. A Little Funk In Your Pocket 6. Addicted 7. Lifestyle 8. Itzin 9. The Way It Goes 10. Lights 11. Turn The Music Up 12. Heaven 13. Spice Of Life 14. One More For The Road


■Jesse Boykins III&MeLo-X/Zulu Guru
[ 2012 ] Ninja Tune

 曼陀羅のような宗教的で宇宙的なジャケットが目を引く、シンガー・ソングライターのジェシー・ボイキンス3世とMC/DJのメロー・Xとのコラボ作。

 シカゴ生まれ、ジャマイカ&マイアミ経由でNYを拠点とするジェシーは、ファルセットを活かした感傷的な歌唱によってナイーヴでロマンティックな世界を創生。一方、メロー・Xはマックスウェル『BLACKsummersnight』のリミックスを手掛けた奇才として知られる。このような経緯からも、マックスウェルやディアンジェロのネオ・ソウル路線を洗練させたミスティックな音世界を構築したのも頷ける。

 フォーカスしたのはアフロ・ビートやインド的なもの。哲学的、原始的なものを見つめながら、エレクトロニックという現代的アプローチで、時空や既成概念を超越したソウル/ヒップホップを提示。キャッチーではないが、幻想的で独創的な展開で異空間へといざなう。

 ズールーはアフリカ民族、グールーはヒンドゥー教の尊師を示す。アフリカとアジアの融合を音楽的に試みた、前衛的ながらもモダンな“ソウル(魂)の行脚”と呼べる傑作だ。

Jul 10 ,2013 UP (Baseball Mania)

1. Zulu Guru ft.Trae Harris 2. I'm New Here 3. Black Orpheus 4. Change Of Heart ft. MoRuf, Chris Turner 5. Broken Wings 6. Schwaza ft. JoeKenneth 7. The Perfect Blues ft. Jesse Boykins III 8. Searching Her Ways 9. Primal Chance ft. Mara Hruby, Jesse Boykins III 10. Strange Recreation ft. Jesse Boykins III 11. Tribe Of Stafa ft. MeLo-X 12. Better For You [Remix] ft. Ango 13. Outta My Mind ft. Chris Turner, Jesse Boykins III 14. Zulu Guru ft. Kesed


■Secure/IDENTITY
[ 2012 ] P-VINE RECORDS

 90年代R&Bを中心とした楽曲をア・カペラでカヴァー、その映像を動画サイトにアップして話題を集めた4人組ヴォーカル・グループの2012年作。ネット環境の発展により世界各地の逸材を比較的容易に発掘できる時代。彼らもそんな時代に大きく飛躍するグループの一つとなるかもしれない。

 オランダ・ロッテルダム出身で2002年に結成。ボーイズ・II・メンやジョデシィらのスタイルを継承したUS R&B風ミッドなどを甘いハーモニーで披露する。

 ブライアン・マクナイトやジョーあたりを意識したバラードあり、ラップを含めた“In Tha Club”などのフロア・キラー、セクシーなスロー・ジャムと振り幅も広い。それだけでなく、“Let Me Be”ではエフェクトを効かせるなど、“今”を意識したアプローチも怠らない。

 なかでも“Secure(Get Up!)”は、ジョー“Stutter”に比肩できる出来。EDM全盛でやや閉口気味なR&B好事家に、US圏外から良きR&Bを吸収するのも悪くないのではないか。

Jul 24 ,2013 UP (Baseball Mania)

1. In Tha Club 2. The One I Need 3. Used To Be 4. Up 4 You 5. Rock Like This 6. Ladies Holdin’ It Down 7. Let Me Be 8. I Can’t Let Go 9. What The Deal 10. S.E.X. 11. Another Man 12. Secure(Get Up!) 13. The One I Need (Remix) 14. It’s Over Now


■The Wonderful Sound Of Induce!/HALFWAY BETWEEN ME AND YOU
[ 2012 ] WONDER SOUND

 自ら“Wonderful Sound”と言い切る自信は、名に違わず。マイアミを拠点にマルチに活動するDJインデュースが、名義を変えてリリースした2012年作。マイアミのヒップホップ・レーベル“Counterflow”創設者のひとりという縁故を活かし、その周辺人脈を呼び寄せ、制作ではなく演者としての才知を披露している。

 シングルとなった“Pretty”“Get Down Saturday Night”からも判るとおり、魅力なのは80年代ディスコ/ブギー、ファンクを横溢した明快なサウンド。前者はプリンス、後者はクール&ザ・ギャングあたりを意識させ、そのポジティヴな“継承”っぷりはかえって清々しいくらいだ。

 良質なソウル・ミュージック……R&Bからヒップホップまでのエキスをヴァラエティ豊かに抽出し、ジャケットよろしくダンディな装いで描いた“伊達男”な一枚。しかも、鼻につかない親しみやすさが楽しい。

Aug 01 ,2013 UP (Baseball Mania)

1. Love Letter 2 U 2. Cover Girl Ft. Seven Star & Jack Splash 3. Her & I 4. Pretty 5. Get Down Saturday Night Ft. Fantab 6. Good Day (Sunday Afternoon) 7. Livin’ In The Future Ft. Jack Splash 8. Future Reprise 9. One Day, Some Say 10. Beautiful Thing 11. My Sweet, Goodbye


■Especia/AMARGA-Noche-
[ 2013 ] つばさレコーズ

 ムーディなホーン、哀愁や気だるさを感じるシンセやコーラス、夕暮れや夜景を想起させるサウンド……2013年には時代錯誤と思われそうなAOR/フュージョン調の楽曲を奏でる、大阪・堀江系アイドル・グループの2枚同時発表EPの“Noche”篇。多種多様なアイドル・グループが有象無象するなか、80年代的な世界観で勝負する彼女ら。ジャケットよろしくアーバンやトレンディといったテーマに真っ向からぶち当たる姿勢が快感だ。

 EPながらインタールード3曲を組み込むなど、コンセプトから外れない作り。山下達郎「MIDAS TOUCH」のカヴァーなどは、かつての山下のディスコ・ヒット「BOMBER」の火をつけた大阪という土地柄を意識してのものか。想像以上の相性の良さを見せている。

 閉塞感を久しく拭えない近年にこそ、このフュージョン/ディスコを行き来する彼女らの楽曲に耳を傾けるのも面白い。当時の雰囲気丸だしの「パーラメント」のPVも必見。

Aug 26 ,2013 UP (Baseball Mania)

1. AMARGA 2. トワイライト・パームビーチ 3. センシュアルゲーム 4. Midas Touch 5. Interlude 6. パーラメント 7. ステレオ・ハイウェイ 8. 不機嫌ランデブー 9. AMARGA(reprise)


■Mayer Hawthorne/Where Does This Door Go
[ 2013 ] Republic of Music

 レトロなソウル・ミュージックを奏で、R&B/ソウル好きたちを中心に好評を博しているマルチな才能を持つシンガー・ソングライターによる、『Strange Arrangement』『How Do You Do』に続く3作目。

 これまではモータウンや古典的ソウルに対し、ヒップホップDJを通過した素地と音楽的“オタク”資質によってアプローチしていた彼。本作で近年に流行のヴィンテージな音質を重ねて披露してくるのかと思いきや、単なる回顧を選択せず、AORやフュージョンあたりのアーバンっぽさも感じさせるサウンドを披露してきた。プロデュースにファレル・ウィリアムス(""Reach Out Richard""“The Stars Are Ours”あたりはモロにファレル節!)ら、客演にケンドリック・ラマーらを迎えたことも刺激になったか。

 単なるヴィンテージではない、彼ならではのモダン・ソウルを描き出し、より深化を極めた傑作といえる。

Sep 06 ,2013 UP (Baseball Mania)

1. Problematization 2. Back Seat Lover 3. The Innocent 4. Allie Jones 5. The Only One 6. Wine Glass Woman 7. Her Favorite Song 8. Crime (with Kendrick Lamar) 9. Reach Out Richard 10. Corsican Ros 11. Where Does This Door Go 12. Robot Love 13. The Stars Are Ours 14. All Better


■Esco Williams/New Challenger
[ 2013 ] P-VINE RECORDS

 メイヤー・ホーソーンやアレン・ストーンなど、近年、ナード(nerd)とソウルは好相性なのか。英リヴァプール出身のエスコ・ウィリアムズのデビュー作は、その名のとおり“チャレンジャー”にふさわしい潔さとUKブラックのルーツを感じさせる注目作だ。

 『スーパーマリオブラザーズ』の効果音や“プリンセス ピーチ”などの詞、PVではスーパーファミコンや格闘ゲーム風のシーンが登場するタイトル曲“New Challenger”ほか、“High Score”なる曲や演奏バンドがザ・コントローラーズを名乗るなど、ゲーマー気質を最大限に発揮。だが、楽曲はすこぶるソウルフルで、昨年には英の音楽アワード“MOBO”の新人賞も受賞した。

 最大の魅力はゲーマーらしからぬ(?)男前のパワフルな声。父がカリビアン、母がジャマイカ系含むミックスという出自もあり、南部やレゲエの薫りも。音はレトロなシンセもあり、ジョン・レジェンドとオマーを融合させた感もある。音楽界を席巻する挑戦者となるか、期待したい一人だ。

Sep 19 ,2013 UP (Baseball Mania)

1. New Challenger 2. Starry Eyed 3. I Want You More 4. Something For Jazz 5. Dreamin' 6. High Score 7. Just Friends 8. New Challenger (Interlude) 9. This Time 10. Day One 11. About You (Sweet Kisses) 12. New Challenger (Kev Wilson Remix)


■YOSHIKA(from SOULHEAD)/MY ANTHEM
[ 2013 ] ディー・アイ・エイ・エイ

 初心に帰ることは後退ではなく、未来へ進むための重要な礎。姉妹デュオ“SOULHEAD”として颯爽とデビューした姉、YOSHIKAが10年を過ぎて出した答えの一つがこの初のソロ・アルバムに凝縮されている。

 2007年のベスト盤前後から雲行きが怪しくなり、約4年のブランクを経てavexへ移籍。心機一転ロックなど新機軸を導入したセルフ・タイトル作は、どこか迷いも見え隠れ。次作は曲風も寄り戻したが、不安定さを露呈した感は否めなかった。

 久しく悩み苦しんだ彼女が出した一つの選択がソロ。自身を見つめなおす意味も込めてか、愛聴曲カヴァーを中心とした原点回帰な内容に。ジュニアやチェンジなど彼女らしいルーツが窺えるカヴァーもいいが、やはり注視すべきはオリジナル。盟友OCTOPUSSYの片割れ、菱川亜希ほか制作陣が、彼女のセンスを最大限発揮させるグルーヴを提供。再起を期待するに充分な資質を備えたステップ作だ。

Oct 02 ,2013 UP (Baseball Mania)

1. OPENING -MY ANTHEM- 2. ALL I DO 3. THE GLOW OF LOVE 4. THRILLER 5. MAMA USED TO SAY 6. NATURAL LADY 7. I DREAM 8. ALL I WANT IS U 9. RIGHT HERE (HUMAN NATURE REMIX) 10. A LONG WALK 11. TIME AFTER TIME 12. CHANGE THE WORLD 13. I DREAM (MAKOTO 80’S LEGACY REMIX) (BONUS TRACK)


■Chrisette Michele/Better
[ 2013 ] Motown

 呪縛と模索の果てにようやく見つけた自分らしさ。完璧ではないが“ベターでしょ?”と語りかけられる一枚。ロングアイランド出身、ニュー・ソウルの歌姫による4作目。

 デビュー作『アイ・アム』は賞レースに軒並みノミネート。『エピファニー』はNe-Yoらによる洗練された作風が受けヒットを記録。だが、自身の存在価値をこの手で掴みとりたかったのか。当時の坊主頭のルックス同様、音楽的にも刺激を求めた前作『レット・フリーダム・レイン』は思うような評価が得られなかった。

 それから約3年。三十路にもなり大人になったのか、開き直ったのか。どちらにせよ浮き足立つことなく、自然体が意識を好転させたのは確か。前作での重苦しさは陰を潜め、瑞々しくも愛嬌あるハスキーなあの声が帰ってきた。気鋭の作家陣も良質の楽曲を提供。目先に囚われない泰然自若な姿勢を含め、間違いなくキャリアハイといえる快作だ。

Oct 15 ,2013 UP (Baseball Mania)

1. Be In Love 2. A Couple Of Forevers 3. Let Me Win 4. Rich Hipster (feat. Wale) 5. Love Won’t Leave Me Out 6. Interlude (In My Head Better) 7. Better 8. Snow 9. Visual Love 10. Charades (feat. 2 Chainz) 11. Interlude (In My Heart - Convo With Boyfriend) 12. You Mean That Much To Me 13. Supa 14. Interlude (In My Bed - Sleeping Alone) 15. Get Through The Night 16. Can The Cool Be Loved? (feat. Bilal, Dunson) 17. Ten Foot Stilettos 18. Interlude (Perch Yo Girlz - Phone Convo) 19. I'm Still Fly 20. Love In The Afternoon (feat. Nello Luchi)


■Brian McKnight/More Than Words
[ 2013 ] Ent. One Music

 ヴェテランならではの安心感と余裕、そして遊び。一見、悠悠自適といった佇まいも、実はしっかりと今という時流を見据えている。20年を超えても第一線で活躍するR&Bシンガーは、自分のすべき音楽をしかるべきタイミングで提供してくれる。

 第一印象は初期に近い80年代の薫り。だが、回顧のみに陥らず、今を意識したものを反映させている。軸となるのはR&B然としたミディアムだが、“Off The Wall”のベース・ラインを想起させるファンキーな“Don't Stop”や、爽やかなシンセ使いのAOR~シティ・ポップ風“Letsomebodyluvu”などは、こんな引き出しもあったのか! と思わせる斬新さ。ワム!“Last Christmas”風リズムが耳を惹く“She Doesn't Know”や80'sミーツ4つ打ちな“Made For Love”も面白い。

 SNSを通じ、交流や情報発信を怠らない彼。だが、“言葉以上に”訴えたいロマンが本作には詰まっている。

Oct 30 ,2013 UP (Baseball Mania)

1. Don't Stop 2. Letsomebodyluvu 3. 4th of July 4. Sweeter 5. She Doesn't Know 6. More Than Words 7. Nothing But a Thang 8. Livewithoutyou 9. Made for Love 10. Get U 2 Stay 11. Slow 12. Another 13. Trying Not to Fall Asleep 14. Ididntreallymeantoturnuout(featuring Brian McKnight Jr.) 15. The Front, The Back, The Side(featuring Niko McKnight)


■JOE/Doubleback Evolution of R&B
[ 2013 ] Massenburg Media

 "R&Bの進化をタイトルに謳ったかと思えば、しばらく封印(?)していた“裸ジャケット”。「オレがやらねば誰がやる」といった気概がビシビシと伝わってくるようだ。20年選手のヴェテランとなったジョーの10枚目のアルバムは、昨今の乱れたR&Bシーンに本来の姿を取り戻したいと願う彼からの処方箋なのだ。

 その“進化”とは何かと紐解いてみると、生楽器を鳴らした気品や華麗さをまとった上質な音楽。かつていたるところで流れていた王道の“R&B”で、もう一度あの洗練されたスムーズなソウル・ミュージックに立ち戻ろうというジョーからのメッセージなのだ。

 だが、それは“進化”でなく“回帰”に過ぎないのでは? という人もいるだろう。形としてはそうかもしれないが、つまるところ“良質な音は時代を超える”ということを証明したかったのではないか。スターゲイトら外部制作陣を招きながらも大半を自身で書き、全編ジョー色に染まった、エレガントなR&Bクラシックスだ。"

Nov 26 ,2013 UP (Baseball Mania)

1. Something For You 2. Easy 3. Baby 4. Compromise 5. Magic City 6. I'd Rather Have A Love 7. Love & Sex feat. Fantasia 8. Sexy 9. More 10. Mary Jane 11. 1 to 1 Ratio feat. Too $hort 12. DoubleBack

◇◇◇

※「近況注意報 1105 音楽篇(3)【3055】」へ続く













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近況注意報 1105 音楽篇(3)【3055】

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 音楽レビューサイト「3055」に寄稿したレビューの第3弾です。

◇◇◇

≪2014年掲載分≫

■Janelle Monae/The Electric Lady
[ 2013 ] Warner

 古代と未来を繋ぐアフロ・フューチャリズムをテーマにした『ジ・アークアンドロイド』で喝采を浴びた“クイーン・オブ・フューチャー・ソウル”、ジャネール・モネイ。その成功もあってか、この2作目にはプリンス、エリカ・バドゥ、ミゲル、エスペランサら豪華な面々が集った。

 だが、その豪華客演陣に浮かれず、あくまでも前作の続編として着手。それはオーケストラによるオーヴァーチュアやインタールード、組曲風の構成のほか、前作同様“Suite~”と区切られた章立て作風からも窺える。

 リーゼントヘアにタキシードという強烈なルックス同様、楽曲も多彩で独創的。その享楽的な娯楽の下、揺るがない信念をぶちまけているのが痛快だ。エリカ客演の“Q.U.E.E.N.”や“Electric Lady”では、縛られた女性像からの解放が揚々と謳われる。

 壮大なスケールで描くエンタテインメント絵巻。娯楽の裏側にある社会への鋭い視点に唸らされる作品だ。

Jan 09 ,2014 UP (Baseball Mania)

1. Suite IV Electric Overture 2. Givin Em What They Love (feat. Prince) 3. Q.U.E.E.N (feat. Erykah Badu) 4. Eletric Lady (feat. Solange) 5. Good Morning Midnight (interlude) 6. Primetime (feat. Miguel) 7. We Were Rock & Roll 8. The Chrome Shoppe (interlude) 9. Dance Apocalyptic 10. Look Into My Eyes SUITE V 11. Suite V Electric Overture 12. It’s Code 13. Ghetto Woman 14. Our Favorite Fugitive (interlude) 15. Victory 16. Can’t Live Without Your Love 17. Sally Ride 18. Dorothy Dandridge Eyes (feat. Esperanza Spalding) 19. What An Experience


■SOULCHEF/Classics
[ 2013 ] GOONTRAX

 世界は広いようで狭い。また逆も真なり。音楽を深く好む者でなくとも、自身に衝撃を与えた音楽に出会った時、音楽は一瞬にして国境や人種、ジャンルを超越するから面白い。ニュージーランド・オークランド出身のMCもそんな感覚を経験したに違いない一人だ。

 当初は自国産ヒップホップに夢中だったが、90年代USヒップホップとの出会いで開眼。ジャズやソウルに傾倒し、自国シーンを世界標準へとのしあげるべく、ネットを通じて海外のアーティストをプロデュースすることで名を挙げた。2010年の初作『Escapism』発表後は“NZのNujabes”と評判に。それから3年後、初のベストとなるのが本作。

 フロウやトラックは冷温どちらにも振り幅があるが、走るビートはどれもグルーヴィ。肉をえぐるようなハードコアとは無縁だが、耳をすり抜けるだけではない、趣深く洗練されたヒップホップを刻む。レトロだが洒脱で新鮮。細胞までグルーヴを浸透させそうだ。

Jan 30 ,2014 UP (Baseball Mania)

1. Eyes Like Blue Skies feat. Need Not Worry 2. Franki Valli feat. The Outfit 3. Drifting In A Daydream feat. Need Not Worry 4. When I Close My Eyes feat. Tunji 5. Bad Bad Whiskey feat. Home Brew 6. California feat. Nieve & Tunji 7. Breathless feat. Hy-Definition 8. Tonight feat. Deep Foundation & Ashley Robles 9. How We Do feat. Nieve & Ine 10. Say Somethin' feat. Nieve, Noah King, Adub & Tunji 11. Proud Of Me feat. Nieve & Marie 12. Dreams feat. Need Not Worry & Ine 13. Hope feat. Marie, Nieve & Noah King 14. Never Been in Love Like This feat. Noah King, Nieve, Adub & Tunji 15. Blind Man See feat. The 49ers 16. Sentimentally Madd feat. Need Not Worry


■Nik West/JUST IN THE NIK OF TIME
[ 2013 ] SWEET SOUL RECORDS

 大仰な煽り文句は時に食傷気味となると知りつつも、『シアトル・タイムズ』による“プリンスとエリカ・バドゥがファンキーなベースラインの上で出会った”との賞賛にも頷ける、アリゾナ州フェニックス出身のベーシスト/シンガーのアルバム。ブーツィ・コリンズのベース講座にはゲスト講師としても招かれる才女だ。

 ソウル、ファンク、R&Bあたりをスムーズに横断する楽曲は全編高い質を誇る。腹に響くグルーヴィなベースはもとより、曲により表情を変えるヴォーカルにも魅力を感じた。

 ファットでファンキーなベースが強烈なインパクトを与える“Forbiddenn Fruit”を聴けば一気にプリンスを想起するが、“Black Beauty”“Be Okay”あたりの佇まいはジル・スコット風味のジャジィなネオ・ソウル。その点からも、ロバート・グラスパーやエスペランザ・スポルティングら近年のトレンドともいえる“ジャズ×R&Bの邂逅”をファンキーな切り口で提示したといえるか。

 モデルの経験もある才・美備えたポスト・エスペランザ最右翼の今後に要注目だ。

Mar 05 ,2014 UP (Baseball Mania)

1 Wait a Minute 2 Forbidden Fruit 3 Do What You Gotta Do 4 Who's in the Mirror 5 Eyes Closed 6 Just in the Nik of Time 7 Written All Over Me 8 Black Beauty 9 Be Okay 10 Never Forget to Love 11 Black Beauty [Live] (Japan Bonus Track) 12 Forbidden Fruit [Live] (Japan Bonus Track) 13 Superwoman [Live] (Japan Bonus Track)


■ED MOTTA/AOR
[ 2013 ] P-Vine

 巨漢で髭面と一見コワモテ風だが、音を鳴らすとそれに陶酔し、客を楽しませるアドリブには茶目っ気たっぷり。2003年のインコグニートのブルーイとの来日公演での彼を目の当たりにし、大きなインパクトを受けたことを覚えている。

 そのブラジリアンのエヂ・モッタが、冠名通りの“ザ・AOR”というべき作品を作り上げた。レコード収集家として知られ、山下達郎を”神”と仰ぐ親日家による、自身がよく耳にしたという80年代隆盛のAORサウンド・マナーを踏襲した、爽やかな夏の涼風のような一枚だ。

 デヴィッド・T・ウォーカーやブルーイらの共演も手伝って、幼少期から親しんだAORサウンドに思うがままに委ねた歌いぶりとともに、エレガントなムードが充満。何より癒しと興奮とを適度に行き来する絶妙のグルーヴがたまらない。スティーリー・ダンやボビー・コールドウェルあたりに目がない人はもちろん、良質なシティ・ポップ好きにも薦められる好盤だ。

Mar 13 ,2014 UP (Baseball Mania)

1. PLAYTHINGS OF LUV 2. SIMPLE GUY 3. LOST IN THE NIGHT 4. DONDI 5. SMILE 6. 1978 (Leave The Radio On)  7. DRIED FLOWERS 8. AOR 9. FARMER'S WIFE 10. MAIS DL QUE EU SEI 11. MARTA (Alternate Piano solo) 12. LATIDO 13. DONDI (Alternate Guitar intro) 14. A ENGRENAGEM


■一十三十一/Snowbank Social Club
[ 2014 ] Billboard Records

 シティ・ポップを極めたといっていい。『CITY DIVE』から続く、一十三十一(ヒトミトイ)のアーバン路線第3弾。街、海ときて、本作は冬が舞台。前作ではウェットスーツを着ていたジャケットも、真冬のゲレンデに衣替え。バブル時代に登場したホイチョイ映画的な世界観で、リゾートでのラヴアフェアを演出してみせた。

 デザインのみならずサウンド、言葉選びをみても、見事にそのムードを踏襲。甘酸っぱい胸キュンな青春群像を、あくまでもオシャレに、トレンディに描き出す。まさに『私をスキーに連れてって』の世界へタイムワープさせたような出来だ。彼女の歌唱は媚薬系とも呼ばれるが、当時のトレンド・アイコン、ユーミンとどこか声の質感が似ている気も。そのあたりもシティ・ポップとの融和性をもたらした一因かもしれない。

 とはいえ、単なる焼き直しに終わらないのが傑作のゆえん。クニモンド瀧口(流線型)やtofubeatsほか気鋭クリエイターが2010年代としてのシティ・ミュージックにしっかりとドライヴしている。
 
 近年着目される80年代ポップス。閉塞感ある時代だからこそ、思い切ってトリップしてみてもいいのではないか。

Mar 26 ,2014 UP (Baseball Mania)

01 Snowbank Social Club 1 02 Catch Me in the Snow ~銀世界でつかまえて~ 03 Night Flight Telephone Call feat. PUNPEE 04 Winter Rouge Mellow 05 Silver Wind ~移りゆく季節~ 06 Snow Storm Loneliness 07 Frozen Horizon 08 Chocolate Neverland 09 Diamond Dust 10 Snowbank Social Club 2 11 Park Suite feat. BTB 12 Awakening Town


■Pharrell Williams/GIRL
[ 2014 ] Sony

 ダフト・パンク“Get Lucky”やロビン・シック“Blurred Lines”をはじめ、八面六臂の活躍の2013年。年明けてのグラミーで4部門で受賞を果たしたファレル・ウィリアムスが『イン・マイ・マインド』以来約8年ぶりにアルバムを発表した。随分と間隔が空いたが、それは多忙ゆえのことで、ブランクとは無縁なのは言わずもがな。ソロ2作目では、2010年代中葉の主流になりうる近未来ディスコ・ファンクを届けてきた。

 ゴスペル風多幸感溢れる大ヒット作“Happy”をはじめ、ホーンとファルセットの高揚が胸躍らせ、マイケルがちらつく“Brand New”、ダフト・パンクとの邂逅がもたらしたようなエフェクト使いの“Gust Of Wind”など、既聴感を親近感へとシフトさせつつ古臭さを感じさせない手合いは見事。旧き良きディスコ、ソウルを手本に、新旧最良のバランス感覚で“今”という時流にかなった音を導き出している。

 しばらくの好調を予感させる傑作といえよう。

Apr 08 ,2014 UP (Baseball Mania)

1 Marilyn Monroe 2 Brand New feat. Justin Timberlake 3 Hunter 4 Gush 5 Happy 6 Come Get It Bae 7 Gust of Wind 8 Lost Queen 9 Know Who You Are Duet with Alicia Keys 10 It Girl

◇◇◇











 以上です、キャップ。










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FC東京×Honda FC@味スタ【天皇杯】

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 不甲斐ない内容だが、結果は残して準々決勝進出。

 第96回天皇杯、FC東京はACL出場チームということでシードされ、4回戦からの出場。その初戦は岐阜(J2)、松本(J2)、盛岡(J3)と3戦連続でJクラブを撃破してきたJFLのHonda FC(静岡県代表)。以前、C大阪、山形、湘南に所属した古橋達弥が所属するJFLの雄だ。
 FC東京は森重、丸山が日本代表、ネイサン・バーンズがオーストラリア代表に選出されたため欠場、また、前田、東が負傷により離脱となかなか厳しい状況。特に要であるCB二人が抜けるのは痛い。とはいえ、対するHonda FCも6日のリーグ戦(対ラインメール青森)から地元・浜松へ戻らず中2日での試合となる。どちらにも影響が懸念されるなかでのナイトゲームとなった。

 結果的には中2日の疲労が後半に出始めたHonda FCが、後半から梶山を下げて小川をピッチに送り、両SBを小川、室屋に、右SBで先発した橋本を上げた構成に変えたFC東京に対応しきれなかった形で逆転を許し、4戦連続のジャイアントキリングはならず。それでも、前半に2本放ったシュートのうち最初の1本を久野が決めて先制。後半にDFに当たって角度が変わり、GKが逆を取られてしまったややアンラッキーな中島の同点ゴールを食らうと、流れを東京に渡しかけたなかで室屋に逆転ゴールを決められてしまう。それでも、終盤も果敢に最終ラインを高く保ったまま東京陣内へ攻め込み、ゴールポストに直接当たった栗本広輝のFKなど“あわや”の場面を演出。シンプルに素早くボールを動かすショートパスサッカーで攻め続け、大いに東京の骨を折らせた。

 それに引き換え、FC東京は低調なパフォーマンスに終始。トップの平山は空中戦で競り負けたのをはじめボールがなかなか収まらず、トップ下の河野も効果的な動きが出来ず。梶山、田邉のボランチの球離れも悪く、ボールロストが散見。最終ラインはGKを含めて連係に不安定さを隠せず、幾度となく裏のスペースを使われ、吉本が広い範囲で走り回される場面が多発。ただ、Honda FCがシュート一歩手前のラストパスの精度をやや欠いたため、助けられた形も少なくなかった。中島を除いて、何より攻め込もうという強い意志、気持ちの面では完全に気後れしていたと言わざるを得ない。

 後半は中島のラッキーなゴールで不安が募りかけたムードを断ち切ることに成功したが、なかなか一気に逆転とまではいかず。むしろ、中島へボールを委ねる比重が高くなり、相手のマークも厳しくなって再び停滞しかけてしまう。しかしながら、左サイドは小川、右サイドは室屋とサイドからの攻撃がボディブローのように効果が現れると、その流れから室屋のループシュートで逆転。何とか90分で結果は残せた。

 先発は中島以外は多くが身体が重かったように映ったほど、パフォーマンスにはキレがなかった。途中出場の小川は効果的に左サイドを上がったが、チャンスメイクの際のクロスが低質。フリーでクロスを上げられる場面も多かっただけに悔やまれるところ。林はよく走り、チームの推進力を高めるために尽力したが、もっとエゴイストにシュートを狙っていかなければダメだ。いくらJ3でハットトリックや連戦でゴールを決めていても、トップチームで自己表現出来なければ、J3での努力も無駄になってしまう。

 正直なところ、Honda FCが突き抜けるまでの勢いを終盤まで保てなかったゆえ、勝てたような試合。代表選出によってレギュラーが抜けているからといってこの調子では次はない。準々決勝は川崎と浦和の勝者。どちらが勝ち上がってきても、FC東京にとっては厳しい戦いになる。約1ヵ月半と時間が空くが、心身共に戦うモードを維持して元日まで駆け上がってもらいたい。

◇◇◇

【第96回 天皇杯全日本サッカー選手権大会 4回戦】
2016年11月09日/味の素スタジアム/19:04キックオフ
観衆:6,605人
天候:晴
気温:8.2度/湿度:24%
主審:三上正一郎/副審:作本貴典、清水崇之/4審:佐藤貴之

 FC東京 2(0-1、2-0)1 Honda FC

得点:
(東):中島翔哉(51分)、室屋成(80分)
(H):久野純弥(18分)

≪スターティングラインアップ≫
47 GK 秋元陽太
37 DF 橋本拳人
04 DF 高橋秀人
29 DF 吉本一謙
06 DF 室屋成
10 MF 梶山陽平 → 小川諒也(46分)
27 MF 田邉草民
48 MF 水沼宏太
17 MF 河野広貴 → 林容平(58分)
39 MF 中島翔哉 → 羽生直剛(90+2分)
09 FW 平山相太

≪サブスティテューション≫
31 GK 圍謙太郎
25 DF 小川諒也
22 MF 羽生直剛
32 MF ユ・インス
34 MF 野澤英之
19 FW 平岡翼
23 FW 林容平

≪マネージャー≫
篠田善之

◇◇◇

【第96回 天皇杯全日本サッカー選手権大会】
第4回戦 2016/11/09(水)19:00〇FC東京 2-1 Honda FC(味スタ)

準々決勝 2016/12/24(土)**:** FC東京✕(川崎✕浦和)(未定)
準決勝  2016/12/29(木)**:** 未 定✕未 定(未 定) 
決 勝  2017/01/01(日)**:** 未 定✕未 定(吹 田)

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近況注意報 1112 筑波山篇

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 つい先日、夢で「紅葉見に行こうよう~」と誰かに語りかけられ続け、うなされて目が覚めるということがあったので(大ウソロングビーチ)、ちょっぴり遠出の紅葉散歩に出かけてきました。
 急遽の思い立ちだったのでどうしたもんかと考えたのですが、前日のラッキーナンバーが2、9、8だったので、こりゃツ・ク・バだ、と思い込み、秋葉原からつくばエクスプレス(TX)で日本の百名山の一つにに数えられ、“西の富士、東の筑波”と呼ばれる筑波山へ行くことにしました。

 ちなみに、つくばエクスプレス沿線で発売されている「筑波山きっぷ」を購入すると、つくばエクスプレス、シャトルバス、ケーブルカー、ロープウェイの乗車券がセットになっていて便利(有効期間2日間)。つくばエクスプレスのきっぷ購入駅からつくば駅を経て直行筑波山シャトルバスの沼田までは一往復有効(途中下車無効)、沼田からロープウェイつつじヶ丘駅までのエリアはフリー区間で乗り降り自由となっています。また、特典協賛施設もあって、きっぷを提示すると各店舗によって特典が受けられることもあります。今回は秋葉原からつくばエクスプレスに乗って大人で4300円。つくば駅に近づくごとに発売額は安くなっていきますので(たとえば、北千住からだと4040円、流山おおたかの森だと3540円など)、出発地点からつくばエクスプレスの駅までの最善の行き方を考えながら、きっぷ購入駅を決めるといいかもしれません。

 さて、TXつくば駅に着いたら、おそらく筑波山へ行くと思われる老若男女がわんさかいたのですが、ほとんどの人が筑波山入口近くの「沼田」行や筑波山中腹となる「筑波山神社入口」行のシャトルバスへ乗り込んでいきました。自分はつくバス(北部シャトル)から出発し、「筑波交流センター」で降りて、“つくば道”(江戸時代に整備された、筑波山への参詣道で、3代将軍徳川家光が筑波山神社を作るための資材運搬用の道として使用し、その後参道として使われた道。日本の道100選にも選ばれている)を通って筑波山神社へ向かうルートを選択したのですが、まあー誰もこのルートを選択する人がいない。スタート地点がつくば市「北条」という地名で、これまた歴史を感じさせる地名ですが、まあーこのルートで行こうとする人がいない。途中には普門寺とか蔵が並ぶ神郡集落とか石倉RIZという眺望抜群の石蔵カフェがあったり(スコーンを購入、美味!)するのですが、まあー田園風景そのものです(笑)。
 正面に筑波山や中腹の鳥居を見ながら進むのですが、意外とダラダラと上り坂となっています。さらに、六丁目鳥居を過ぎると一気に勾配が急になり、なかなかの上り坂となっているので、甘っちょろいジジババとかひ弱な若造なんかはこのルートで行くよりバスでサッと筑波山神社へ行きたくなる気持ちも解からなくはないです。旧・筑波山郵便局のレトロな建物を見遣りながら石段を上ると、ようやく筑波山神社へ到着。それまではたまに地元の住民の人の姿や数台の車くらいしか見かけなかったのですが、筑波山神社に着いたとたん人がワンサカ。団体客も溢れんばかりで、やっぱりこの季節は混むんだなあと再認識した次第です。

 その後は、筑波山神社を抜けて、ケーブルカーの宮脇駅へ。本当はここから歩いて男体山頂までの2キロ(約90分)を登っていくべきなんでしょうが、そんな面倒なことしたくないケーブルカーに乗りたいので、8分で筑波山頂駅へ到着。ここから男体山山頂を目指しましたが、ここも人、人、人。さらに歩いて15分ほどで隣の女体山へ行けるというので、行ってみたのですが、こちらも人が多く、狭い道ところだとすれ違いに時間がかかり、必要以上に時間をニューヨークロス。女体山御本殿の直前まで行きましたが、行列でなかなか進まないこともあって、こちらは退散して、ロープウェイ乗り場へ。しかし、そのロープウェイ乗り場も列、列、列と山登りなのか行列なのかがだんだんと分からなくなってきたなかで、30分くらいしてロープウェイに乗り込むと、約6分で女体山の中腹のつつじヶ丘駅へ一気に下山。そこからTXつくば駅までのシャトルバスで直行。とはいっても、このバスも混雑で、立ったまま約50分はなかなかキツイものがあるかもしれません。

 駆け足で回ることになったので(実際には駆けてませんが)、やはり「あの店に行き忘れた、あれを食い忘れた、これも食い忘れた…」(食うことばっかり)ということが多発。なので、そのうちリヴェンジしようかと考えてます(考えてるだけ)。

 ひとまず、筑波山神社の裏手にある出世稲荷(朝日稲荷神社)にて相当な金額の賽銭をぶち込んできたので、今後は出世街道まっしぐらになると思います、はい(そういう会社に勤めてないけれども)。

 ということで、その途中で適当に撮った写真でもアップしておきます。

◇◇◇

























































◇◇◇


 








 以上です、キャップ。





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Let's Groove@六本木VARIT

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 冬の訪れを感じる寒さが少しずつ到来するなか、心身をグルーヴとともに熱くさせようという企画ライヴが六本木VARITにて開催。〈Let's Groove〉と冠したこのステージには、6月より3名体制で再始動した新生Especia、先月10月5日に2ndアルバム『LIFE』を発表した“生音ヒップホップ・バンド”のAFRO PARKER、ヴァイオリンやホーンなどの管弦楽メンバーを含む大所帯ポップ・バンドのSpecial Favorite Musicの3組が集結。それぞれの音色は異なりながらも、心地良い音楽を響かせるという意味ではシンクロナイズした3組が、この地に集った人たちの心身を揺らすのに十二分なグルーヴを生み出す好企画となった。



 先鋒はEspeciaで、この日はHi-Fi Cityの面々(ギター、ベース、ドラム、サックス、キーボード)をバックに配したバンドセット。先月の〈Hotel Estrella 六本木飯店〉で観た衣装とは異なり、冨永悠香はパンツスタイル、森絵莉加はペイズリーの模様をあしらったトップスに黒系のスカート、ミア・ナシメントはシースルーベストと真っ赤なルージュが印象的だった。

 先日、MVを発表した「Nothing」からスタート。続いて「海辺のサティ 2016」「Mistake」と新体制のライヴではおなじみとなった構成。ただ、少しずつではあるが、コーラスでのハーモニーの強度を高めるなど、成長と変化が窺えるパフォーマンスを披露。そのなかで何よりも良くなったのは、メイン・ヴォーカルの冨永をはじめ、歌い踊ることを自身たちが楽しめている様子が伝わって来たことだ。
 勘違いして欲しくないのは、笑顔で歌うことが必ずしも楽しめていることではないということ。笑顔で歌わないことが楽しめていないとなれば、「Nothing」や「Savior」など『Mirage』収録曲は一切楽しめてないことになってしまうが、そうではなく、しっかりと音に乗り、歌や踊りへの意識の発揚があるかどうかが肝要なのだ。

 これまではどこか無理に雰囲気を醸し出そうとか、ヴォーカルの精度を高めようとするきらいが見受けられたのも事実。たとえ、ピッチやコーラスワークが安定していたとしても、本人たちが音に“ノレていない”のであれば、楽曲や自身たちの良さは伝わってこない。
 だが、この日の彼女たちはバックバンドを配したこともあり、いつもより動けるスペースが限られたものになったステージであったにも関わらず、その表情やハーモニー、メンバー同士のアイコンタクトなどを見るに、自身たちで充実を感じながらパフォーマンス出来ていたのではないか。楽曲構成に目新しいものはなかったが、「FOOLISH」はかなり安定した力を発揮していたし、ラストの「Boogie Aroma(2016版)」ではフロアのヴォルテージをさらに上昇させていた。たとえば、ミア・ナシメントがヴォーカルを執るなど、トピックのあるなしが少なからずそのステージの評価を上下させた部分もあったと思われるが、ようやく第二章の助走期間を終えられそうな予感も。3人でのステージに慣れてきたということもあろうが、ここから加速モードにギアを入れていけそうだ。

<SET LIST:Especia>
01 Nothing
02 海辺のサティ 2016
03 Mistake
04 Savior
05 FOOLISH
06 Boogie Aroma 2016

<MEMBER>
Especia are:
Haruka Tominaga(vo)
Erika Mori(vo)
Mia Nascimento(vo)

Hi-Fi City(BAND)

◇◇◇



 二番手はAFRO PARKER。10月にはレコーディングエンジニアにIllicit Tsuboiを迎えた初の全国流通盤となった2ndアルバム『LIFE』を発表、好評を得ている生音ヒップホップ・バンドだ。福井出身のWAKATHUG、静岡出身の弥之助という好対照なMCと5人の楽器隊で織りなす音は、まさにグルーヴの宝庫。ゆるめのラップ・トラックからメロウなミディアム、ハードに攻めるヘヴィなヒップホップ、アシッド・ジャズ風のグルーヴィ・チューンまで、ジャズ、ソウル、ファンクとヒップホップを高濃度で培養させた彼らでしか成し得ないケミストリーで、痛快なヴァイブスを朝露の滴のように快く降らせていく。

 コミカルなトラックをスキットとして挿入している彼らのアルバムを聴けば分かるが、クスリとさせる笑いを取り込んでいるのも彼らの特徴。オープニングで目一杯伸ばしてセッティングされていたスタンドマイクに届かず、脚立に乗ってMC二人が歌い始めたり、JBマナーで“バス来ない”と唸りながらフリップ芸を見せる「The Rapper In The Rye」、MC中に祖父や祖母から携帯電話が入るコント風MCなど、小ネタ満載で笑わせてくれる。

 ただ、そのサーヴィス精神もどこか“こなしている”感が伝わって来たのも事実。上述の祖父との携帯電話のくだりは、実質上ライヴ情報の宣伝をしただけで弥之助が祖父と掛け合いながら演じる場面もほとんどなく、一風変わった曲繋ぎの域を出ていなかった。それならば、無理して多くの小ネタをつぎ込まずに最小限に留めて、MCと生音バンドが融合して生まれる楽しさに重心を寄せた方がいいのかもしれない。
 というのも、バンド隊が奏でるサウンドを含めて既に高水準でグルーヴを生み出せるゆえ、楽曲だけでも存分に彼らの良さを伝播させるレヴェルにあるといえるからだ。楽曲一つ一つを見てもしっかりとしたストーリーとメッセージが埋め込まれているし、観客の耳目を惹きつけるタイミングやセンスもいい。正統派になれ、とは全く思わないが、小手先の変化に終始する必要はない。それほどの充実度にあるのではないか、と彼らのステージングから感じられた。

 それにしても、アフロパは女性ファンが多かった。

<SET LIST:AFRO PARKER>
Welcome to AFRO PARK
New Era Hip Hop Religion
After Five Rapper -SHACHIKU REQUIEM-
The Rapper In The Rye
H.E.R.O.
Honesty
Cosmic Dance
Life Is Good
※順不同

<MEMBER>
WAKATHUG(MC)
弥之助(MC)
加地三十等兵(g)
BOY GENIUS(key)
KNOB(b)
BUBUZELA(sax)
TK-808(ds)

◇◇◇



 トリは2016年5月に『World's Magic』でアルバム・デビューした、大阪出身の8人組ポップス・バンド、Special Favorite Music。初見なので継続的にそうしているのかどうかは解からないが、前列にヴァイオリン、サックス(フルート)、ギター、ヴォーカル、パーカッション、後列にベース、ドラム、ギターを配した面白い布陣。

 自身でも「ポップなバンドですが」と言っていたが、クメユウスケとラビンユーの男女ヴォーカルを軸とした淡いサイダーのような眩さや清々しさ、瑞々しさがキラキラと煌めくサウンドは、ピュアなポップ濃度100%といった風。いわゆるニューミュージックやシティポップの音の軌跡を辿りながらも、懐古だけにはとどまらない“2010年代=テン年代”のサウンドに見られるフットワークの軽さが魅力なのかもしれない。アクや陰りの少ないParis Matchといったらいいだろうか(爽快なLUCKY TAPESといった方が近いか)。

 男女混成、ヴァイオリン(キュートなルックス)や管楽器、前面に出たパーカッションなどなかなかユニークな編成で見どころもありそうだが、折角ヴァイオリン、サックス、パーカッションなどが前面に出ているのだから、もう少しそのあたりをフィーチャーしたアレンジやパートがあるとより惹きつけられるのかもとも感じた。所帯が大きく(メンバーチェンジもあった模様)バランスをとるのが難しいこともあるだろうが、資質としては可能性を秘めたものがありそうなだけに、もう一つインパクトがあるものがあると(「GOLD」などの“キメ”がある作風に限らず)より訴求力が高まるのではないかと思う。

<MEMBER>
lovinyuu(vo)
Yusuke Kume(vo,g)
Naohiro Okuda(g,syn,ds)
Keiichi Shibuta(b)
Yosuke Fujibayashi(ds)
Katsuya Shinjo(perc,ds)
Haruna Miyata(vn,va)
Yuta Furukawa(sax,fl)

◇◇◇

【〈Especia the Second〉(新体制)以降の記事】

・2016/06/25 ESPECIA@渋谷Club asia
・2016/08/12 Especia「Mirage」
・2016/08/28 Especia@渋谷CHELSEA HOTEL
・2016/09/11 Especia@O-nest
・2016/10/16 Especia@六本木VARIT

◇◇◇
















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FC東京U-23×C大阪U-23@夢の島

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 J3最終節、U-23対決に勝利し、成長の跡を残す。

 6月のアウェイでは1対2と敗れたC大阪U-23を迎えてのJ3リーグ最終戦は、U-23チーム同士の戦いということで共に負けられない意地がぶつかった試合だったが、FC東京U-23が後半に幸先よく先制すると、その後は東京がやや優勢に試合を運ぶ。シュート本数はFC東京の14本、C大阪の4本と大きく差がついたが、C大阪はロングボールからのカウンターで対抗。一進一退になりかけるも、試合終了直前に相手GKのミスを突いたユ・インスが2得点目を決めて、勝負あり。その後、途中出場の久保に絶好の決定機が巡って来たが、シュートは相手GKに読まれて弾かれ、会場に大きな歓声とため息が漏れた。C大阪は丸岡などの実力ある選手のミスがやや目立ったように感じた。

 当初は勝利も覚束ない状況だったが、実践を重ねるに連れて、トップチーム入りを目指す経験者と若手、さらにはユース世代とが次第に融合し始め、全体的な成長と底上げも感じられた。トップ、ユースとのスケジュール調整などもあり、チーム編成は毎回難しさを強いられるが、それでも実践というこれに代わるものがない機会は、非常に貴重だったと思う。この場を有効に使える手応えを感じたはずだし、次年度以降も継続してトライしていってもらいたい。

 また、試合前の売店等には森重以下トップチームの選手たちが出店を手伝ったり、写真撮影に応じたりして盛り上げていた。U-23は別チーム、ではなく、FC東京としてクラブ一体となった姿勢をファン・サポーターに示していたのは、非常に有意義なことだと思う。U-23の良い流れを、天皇杯(ユースは三冠)へとぶつけたいところだ。
 
◇◇◇

【J3リーグ戦 第30節】
2016年11月20日/江東区夢の島競技場/13:00キックオフ
観衆:2,877人
天候:曇時々晴、弱風
気温:22.2度/湿度:50%
主審:塩津祐介/副審:イ・サンギ、阿部将茂/4審:長田望

 FC東京U-23 2(0-0、2-0)0 C大23

得点:
(東):ユ・インス(49分)、ユ・インス(90+1分)
(C):

≪スターティングラインアップ≫ ※ オーバーエイジ枠(GK1名含む)
13 GK 榎本達也 ※
26 DF 柳貴博
40 DF 岡崎慎
25 DF 小川諒也
15 DF 小山拓哉
34 MF 野澤英之 → 久保建英(63分)
43 MF 鈴木喜丈
19 MF 平岡翼  → 阿部拓馬(73分)
24 MF 佐々木渉 → 生地慶充(46分)
32 MF ユ・インス
23 FW 林容平  ※

≪サブスティテューション≫
46 GK 高瀬和楠
21 DF 岡庭愁人
49 DF 坂口祥尉
42 MF 生地慶充
50 MF 久保建英
44 FW 阿部拓馬 ※

≪マネージャー≫
中村忠

◇◇◇

【J3リーグ】
第01節 2016/03/13(日)13:00✕FC東京U-23 0-1 相模原(A・ギオンス)
第02節 2016/03/20(日)14:00✕FC東京U-23 2-3 琉 球(H・味フィ西)
第03節 2016/04/03(日)13:00✕FC東京U-23 0-1 秋 田(A・A-スタ)
第04節 2016/04/10(日)14:00✕FC東京U-23 0-3 富 山(H・味フィ西)
第05節 2016/04/17(日)14:00△FC東京U-23 1-1 G大23(H・夢の島)
第06節 2016/04/24(日)13:00〇FC東京U-23 1-0 鳥 取(A・とりスタ)
第07節 2016/05/01(日)14:00△FC東京U-23 1-1 栃 木(H・味フィ西)
第08節 2016/05/08(日)13:00✕FC東京U-23 0-1 YS横浜(A・ニッパツ)
第09節 2106/05/15(日)14:00✕FC東京U-23 0-3 大 分(A・大銀ド)
第10節 2016/05/22(日)15:30△FC東京U-23 0-0 鹿児島(H・夢の島)
第11節 2016/05/29(日)13:00〇FC東京U-23 1-0 長 野(A・南長野)
第12節 2016/06/12(日)14:00△FC東京U-23 1-1 藤 枝(H・味フィ西)
第13節 2106/06/18(土)19:00✕FC東京U-23 1-2 C大23(A・金鳥スタ)
第14節 2016/06/26(日)17:00〇FC東京U-23 1-0 盛 岡(H・味フィ西)
第15節 2016/07/03(日)15:00△FC東京U-23 1-1 福 島(H・駒 沢)
第16節 2016/07/10(日)15:00✕FC東京U-23 1-2 藤 枝(A・藤枝サ)
第17節 2016/07/16(土)17:00〇FC東京U-23 5-1 琉 球(A・沖縄県陸)
第18節 2016/07/24(日)15:00✕FC東京U-23 1-2 大 分(H・夢の島)
第19節 2016/07/31(日)17:00✕FC東京U-23 0-1 鳥 取(H・味フィ西)
第20節 2016/08/07(日)17:00△FC東京U-23 1-1 栃 木(A・栃木グ)
第21節 2016/09/11(日)13:00△FC東京U-23 1-1 盛 岡(A・盛岡南)
第22節 2016/09/19(月)13:00〇FC東京U-23 1-0 秋 田(H・未 定)
第23節 2016/09/25(日)16:00✕FC東京U-23 0-1 鹿児島(A・鴨 池)
第24節 2016/10/02(日)14:00〇FC東京U-23 2-0 YS横浜(H・味フィ西)
第25節 2016/10/16(日)13:00△FC東京U-23 0-0 富 山(A・富 山)
第26節 2016/10/23(日)14:00△FC東京U-23 1-1 G大23(A・未 定)
第27節 2016/10/30(日)14:00〇FC東京U-23 4-1 相模原(H・味フィ西)
第28節 2016/11/05(土)13:00✕FC東京U-23 1-2 長 野(H・駒 沢)
第29節 2016/11/13(日)13:00〇FC東京U-23 2-0 福 島(A・とうスタ)
第30節 2016/11/20(日)13:00〇FC東京U-23 2-0 C大23(H・夢の島)

◇◇◇

【J3リーグ 順位表】
01 大 分 61/30/19/04/07/50/24/+26
02 栃 木 59/30/17/08/05/38/20/+18
03 長 野 52/30/15/07/08/33/22/+11
04 秋 田 50/30/14/08/08/37/26/+11
05 鹿児島 50/30/15/05/10/39/29/+10
06 富 山 49/30/13/10/07/37/29/+08
07 藤 枝 45/30/14/03/13/48/42/+06
08 琉 球 44/30/12/08/10/46/46/+00
09 G大23 38/30/10/08/12/42/41/+01
10 東京23 36/30/09/09/12/32/31/+01
11 相模原 35/30/09/08/13/29/46/-17
12 C大23 32/30/08/08/14/38/47/-09
13 盛 岡 30/30/06/12/12/43/47/-04
14 福 島 30/30/07/09/14/35/44/-09
15 鳥 取 30/30/08/06/16/30/47/-17
16 YS横浜 20/30/05/05/20/15/51/-36
(※ 勝点/試合数/勝/分/負/得点/失点/得失点)

◇◇◇

【オーバーエイジ枠】
※試合メンバー枠3名+GK1名

【U-23世代選手】
06 DF 室屋成
19 MF 平岡翼
24 MF 佐々木渉
25 DF 小川諒也
26 DF 柳貴博
28 MF 幸野志有人 → 山口へ育成型期限付き移籍
32 MF ユ・インス
34 MF 野澤英之
37 MF 橋本拳人
39 MF 中島翔哉
【JFA・Jリーグ特別指定選手・2種登録選手】
14 MF 平川怜 (​FC東京U-18)
15 DF 小山拓哉(特別指定選手)
21 FW 半谷陽介(FC東京U-18) ※09/02抹消
21 DF 岡庭愁人(​FC東京U-18)
28 MF 伊藤純也(FC東京U-18) ※09/02抹消
28 MF 品田愛斗(​FC東京U-18)
30 MF 内田宅哉(FC東京U-18)
33 DF 蓮川壮大(FC東京U-18)
35 FW 矢島輝一(特別指定選手)
36 DF 山田将之(特別指定選手)
40 DF 岡崎慎 (FC東京U-18)
41 GK 波多野豪(FC東京U-18)
42 MF 生地慶充(FC東京U-18)
43 MF 鈴木喜丈(FC東京U-18)
45 FW 松岡瑠夢(FC東京U-18) ※09/02抹消
45 MF 小林真鷹(​FC東京U-18)
46 GK 高瀬和楠(FC東京U-18)
49 FW 鈴木郁也(FC東京U-18) ※09/02抹消
49 DF 坂口祥尉(​FC東京U-18)
50 MF 久保建英(​FC東京U-18)

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CICADA『formula』

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 紅一点のヴォーカリスト、城戸あき子の顔が靄で隠れて見えないジャケット写真。記念すべきメジャー・デビュー・アルバムであれば、シーンへ登場する際の名刺代わりのようなものだと思うが、どうやらそんな形式ばった考えはないらしい。

 ウィズ・カリファ『ブラック・ハリウッド』をはじめ、確かに近年のヒップホップ勢や新鋭のアンビエントR&Bあたりのアルバム・ジャケットを見ると、顔を隠したり歪めたデザインを施すなど顔を意図的に見せない図柄も少なくはない。その手のスタイルに則ったまでと言われたらそれまでだが、“お決まりのやり方”“空虚な言葉”などの意味があるタイトル“formula”を掲げながら煙に巻くジャケットを見せられると、どうやら本作には一筋縄ではいかなそうな思惑が隠れているのではないか。そんな気配も漂ってくる。

 さて、このメジャー・デビュー作。誤解を恐れずに言うと、本作はCICADA史上最高の名盤、ではない。
 
 全編を聴いてまず強く印象に残ったのは、城戸のヴォーカルの声色が非常にまろやかな艶を持ったものになっているということ。過去作までの“肉欲的な野性をちらつかせながらの艶やかさ”と“スウィートな歌い口”との幅広いギャップの差が妙を生んでいたヴォーカルワークは薄れ、ギャップよりもアダルトな色香の統一感を高めた感じだ。
 次にヒップホップ(ラップ)要素が増えたということ。これはほとんどのディレクションを務めていると思われる及川創介の影響が大きい。実際、全13曲中で及川は11曲で作曲を担当。CICADAサウンドの両輪のもう一人、若林ともは作詞はそれなりにあるものの作曲は「DROP」と「くだらないこと」の2曲のみ。メロディにおいて美意識が高い若林の楽曲が少なく、前作までの流れから考えると多少いびつなバランスでもある。

 時折チラリと覗かせる肉欲的な野性を感じるヴォーカルやメロディアスを極めたメロウな楽曲はやや薄まり、ヒップホップを下敷きにしたポップ濃度の高い楽曲が多く占められている。また、櫃田良輔のソリッドで剥き出しのドラムンベースが強烈なインパクトを残した「stand alone」は「stand alone(blue)」として流麗な上モノを足されて洗練性を強め、木村朝教が弾くボトムの漆黒さもやや抑え気味にも聴こえる。大仰に言ってしまえば、これはCICADAアルバムという以上に“及川アルバム”という気がする。

 しかしながら、間違って捉えてもらっては困るのは、及川の楽曲が増加したゆえにアルバムの質が低下した訳ではない。むしろ、及川が持つ(ややズレたことを意識したような)リズムのセンスやヒップホップの生々しさを城戸のヴォーカルとスムーズに浸透させるべくポップネスでコーティングする術は、彼ならではの手腕。『formula』が全編において淀みなく展開し、一つの作品として美的なスタンスを保っているのは、彼の実力の証左とも言える。ただ、CICADAが本来持っていたバランスとして、及川の手が入り過ぎることの功罪もあろうということ。功は音を重ね厚くして“圧”を高めずに音数を削ぎ落しても訴求力のあるポップネスが構築出来るということ。罪は作風の比重が偏り、トータルバランスを維持するためのアレンジを施さなければならなかったことか。

 ただ、それらのことは、実は本人たちが解かった上でのことなのかもしれない。ヴォーカル・エフェクトを駆使したジャジィ&アンビエントなヒップホップ・ソウル風の「都内」のリリックを辿ると、そんな思いも脳裏を過ぎる。答えが導き出せず遠回りしてスタートラインに戻ったりしながら成長と強がりを繰り返すなかで、“あとちょっとだけ”“今はちょっとだけ”なんだと言い聞かせるように語るフレーズには、心底に潜む微かな不安も垣間見える。作品に自信はあるし、上質と言えるアルバムだ。それでも“これぞCICADA”といえる究極体のバランスまではとれていない。でも、それもほんのちょっとだけなんだ……と。
 
 ジャケットの城戸の顔が煙に巻かれているのは“あとちょっとだけ”のサイン……あくまでも身勝手なこじつけだが、そう思うと合点がいく。一発目に“This is CICADA”と名乗り出なければいけないと焦る必要はない。“お決まりのやり方”と掲げながら、鮮やかにそれを翻す反骨精神もまた彼らの強みかつ美学だ。

 冒頭で「CICADA史上最高の名盤でない」と煽ったのは、次作が必ずや本作を超えるだろうし、メジャー・デビューがどうのこうのといったような“名刺代わり”には役不足なクオリティの高さゆえ。そんな薄っぺらさは微塵もない、聴き応えある重厚さが根(音)を張っている。五感を揺るがす進取性に富むハイセンスなポップ・サウンドで描き上げた、非常に刺激的なアルバムといえるだろう。



◇◇◇

CICADA『formula』(2016/11/09)

01 daylight
02 スタイン
03 INFLUX
04 DROP
05 stand alone(blue)
06 Reloop
07 ゆれる指先
08 都内
09 stilllike
10 くだらないこと
11 one
12 ポートレート
13 dream on

◇◇◇
















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Nao Yoshioka@タワーレコード新宿

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 9月21日にメジャー2作目、通算3作目となるアルバム『The Truth』をリリースした大阪出身のソウル歌手、Nao Yoshiokaのインストアライヴが開催されるとの話を聞きつけ、久しぶりの生Nao声を味わいにタワーレコード新宿店へと足を運んだ。
 タワーレコードは2013年の1stアルバム『The Light』をバイヤーイチオシ企画“タワレコメン”にピックアップしたり、2015年の前作『Rising』では“タワーレコード限定盤”を同時リリースするなど懇意の間柄。今作『The Truth』でもボーナストラック2曲追加のタワーレコード限定盤をリリースしている。今回のタワーレコード新宿でのインストアライヴが各地を巡って来たインストアライヴの最後ということで、ひと際感慨深い様子だ。

 盟友のキーボーディスト、小林岳五郎が奏でるメロウな音に後押しされ、表現力に富む圧倒的な歌唱力を披露するNao Yoshioka。タワーレコード新宿のインストアライヴにて大音量を出力するバンドやアーティストはこれまでにもいたと思うが、肉声でフロア内に響き渡るほど圧倒するというのは彼女くらいなのではないか。これまでの経験を歌声へと積み重ねたような滋味豊かなパフォーマンスは、インストアライヴとは思えぬほど。約40分のステージではあったが、あっという間に惹き込まれ、時間が過ぎていった。

 今作はこれまでとは多少色合いが異なる要素も採り入れ、R&B、特にネオソウル作風が多い印象。今回のステージでも披露した冒頭曲「Borderless」をはじめ、「Freedom & Sound」「Beautiful Imperfections」などはジル・スコットやアンジー・ストーンあたりが好物なリスナーにはきっとハマるのではないかと感じた。「I Love When」などでは以前のソウル色もしっかりと残し、転調が印象的な近年のアンビエント的なアプローチも窺わせるエレクトロニックなR&B「Spark」も面白い。

 「アンコールの拍手をされると出てきてしまう」と言って再びステージインしてのアンコールはデビュー曲の「Make the Change」を。オーディエンスとの“ハンズアップ”を愉しみながら、心地良く優雅な時間は終了。11月24日に迎えるツアー〈The Truth Japan Tour 2016〉のファイナルとなる赤坂BLITZ公演へ向けて、いい足掛かりとなったのではないだろうか。



◇◇◇

<SET LIST>
01 Borderless
02 Freedom & Sound
03 The Truth
04 Beautiful Imperfections
05 I Love When
06 Spark
≪ENCORE≫
07 Make the Change

<MEMBER>
Nao Yoshioka(vo)
Takegoro Kobayashi(小林岳五郎)(key)



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近況注意報 1123 昭和記念公園篇

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 新宿から快速で30分ほどで着く東京ドーム約40倍の広大な緑あふれる都会のオアシス、国営昭和記念公園へ行ってきました。西立川駅下車すぐ。

 開園の9時30分少し前に到着したのですが、結構開門を待つ人の行列が。結構朝から来る人いるんだなあと思ったら、その行列のほとんどはバーベキュー広場へ向かっていきました。ああ、そういうことか。
 昼に近づくにつれて人も多くなり、特に年配の団体があーだこーだいって散策してました。

 個人的には、カメラの調子が急におかしくなり、画面が真っ暗になったり、撮影しても全体的に白くなったり、ピントが全く合わなかったりと不調極まりなかったので、ほとんどいい写真を撮れませんでした。まあ、いつもいい写真を撮れているかというと、それはそれで首を傾げるところではありますが。

 ということで、カメラを修理に出すことを決意した秋の散策となりました。この出費はジャパンカップで馬券をとって補いたいと思います。はい。

◇◇◇









































◇◇◇


 








 以上です、キャップ。





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Nao Yoshioka@赤坂BLITZ

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 ショッキングピンクで語る決意と成長。

 デビュー以来の2作はどちらかというとジャズやソウルなどオールディーズ色の強いルーツ・ミュージックに依拠していたが、3rdアルバム『THE TRUTH』では大胆にモダンにチェンジしてネオソウルやアーバンソウルへと歩みを寄せたNao Yoshioka。それを可視化したかようにジャケットも鮮烈なショッキングピンクを配色。この色は赤と同様、情熱的な心理を表わすと言われているが、まさしく変化を厭わない、今の私自身(=“TRUTH”)を知ってほしいという思いが込められたアルバムとなった。その『THE TRUTH』を引っ提げてのツアー〈Nao Yoshioka The Truth Japan Tour 2016〉のファイナル公演が東京・赤坂BLITZで開催。当日朝には11月ながらも降雪に見舞われた東京だったが、開演時刻が近づくにつれて雪が止んだのは彼女の熱気が伝わったのだろうか。そう思わせるほどの熱とグルーヴが夜の赤坂に生まれていた。



 スクリーンにヴィデオが映されて「Journey(intro)」へと移ると、主役のNao Yoshiokaが鮮やかなドレス姿で登場。やや緊張の面持ちを見せながらも、ミュージックディレクターの松田博之やドラムのFuyu、インストライヴを共にした小林岳五郎ほかが集う盤石のバンドメンバーを見遣った後、おもむろに「Borderless」を歌い始めた。

 個人的に彼女のライヴを観たのは、1stアルバム『The Light』リリース前の2013年10月(Nao Yoshioka@LOOP)と同アルバムのリリースパーティ(Nao Yoshioka@代官山LOOP)、そして先日のタワーレコード新宿でのインストアライヴ(Nao Yoshioka@タワーレコード新宿)。3年前のデビュー・アルバム・リリース時はニーナ・シモンやエタ・ジェームス、サム・クックなどのスタンダードを自身の感情に重ね、身を削るように痛切を帯びながら歌っていた。それはソウル・ミュージックにソウル(魂)を入れて歌うというある種のソウル・カヴァー然たるパフォーマンスでもあったが、それから時を経たこの公演では、R&B/ソウルという楽曲性をしっかりと包含した上でのネオソウルやアーバンソウルを披露。その意識はシャーデーの「キス・オブ・ライフ」や後半戦のメンバー紹介時のマックスウェル「サムシン・サムシン」といったカヴァーにも表われていた。

 ギアがグッと上がったのはやはり、再びスクリーン映像を用いたインターミッション後に観客にスタンディングを促し、コール&レスポンスで熱気を呼び込んだ「Forget About It」以降か。鎌田みずきと吉岡悠歩という表情豊かな実力派コーラス隊のサポートを受けて、ジュジュ(ハスキー声のJUJUの方ではない)のゴー・ゴー風の薫りも漂わせたファンキーなグルーヴで、オーディエンスの身体を揺らせていく。
 「Freedom & Sound」「Set Me Free」「Make The Change」やチャカ・カーンの名唱で知られる「チュニジアの夜」のカヴァーなどのミディアムでは、ジル・スコットやアンジー・ストーン、あるいはマーシャ・アンブロウジアスあたりのR&Bやネオソウルのムードを存分に湛えた表現力と芳醇な色香を伴ったヴォーカルワークで沸かせる。その色香がグルーヴと妙になり得るのは、ジャンバと小林岳五郎によるメロウな鍵盤捌きの影響も大きい。ヴェルヴェットのような深い光沢を感じるスムーズな上モノを奏でたかと思えば、コロコロとカラフルな音色で装飾したりと、Nao Yoshiokaのヴォーカルにさらなる奥行きを与えていた。もちろん、基盤となる松田博之のベースとFuyuのドラミングというリズム隊の仕事も見事で、ノリの良さでは田中“TAK”拓也のギターが一辺倒に陥らせないメリハリをつける先鋒として敏腕を発揮していた。

 機微を存分に声色に染み込ませたセクシーな「I Love When」で本編は幕。アンコール明けに披露した「Possibility」は本来は『THE TRUTH』へ収めたかったという未発表曲。“可能性”というタイトルは、常に身近にある不安と未来への期待との狭間で揺れる彼女のアイデンティティとも言えるか。こちらもネオソウル路線を踏襲したアーバンな作風にチャレンジし、それを全うする彼女のポテンシャルの高さと貪欲に音楽に向き合う決意のようなものが伝わって来た。

 ルーツ的なサウンドからアーバン・モダンなR&Bへの移行には正直躊躇ったところもあるかと思う。だが、クオリティの高いクリエイターたちに囲まれたのが幸いし、当初の思惑以上の実感を得ているのではないか。楽曲の中に物語性を感じるのもその一つで、歌唱力だけではない大人の嗜みを持った“引き”の美学を擁した描出に成長の跡を感じた。Nao Yoshiokaなりのネオソウル(“Nao Soul”とでも言おうか)が構築され、実力派ソウル・カヴァー歌手から脱したオリジナリティ溢れる歌手への飛躍を証明した瞬間でもあった。



 ただ、一見順風に見えるものの課題はある。なかには「英語でR&Bやソウルを歌うなら、洋楽アーティストでいい」というリスナーもいるだろう。この手の意見の多くは、正確には批評というよりも自身の嗜好による話のすり替えなのだが、とはいっても、確かに日本人は特に歌詞を重視するリスナーの割合も多く、英語だとスッと頭に入ってこないとして敬遠しがちな向きもあるのも事実。だからといって、日本語詞で歌えばいいかという話でもない。
 実は、こういったR&B/ソウルの好事家だが日本人アーティストにやや懐疑的(日本人がそのまま英詞曲を歌うことに疑問を持つ)なリスナーをどのように手元に引き寄せるかというのが、ビジネスとしてプロとしての成功のカギを握っているような気もする。上手いだけでは飯が食えないプロの世界をどう生き抜くかはどのアーティストにもついて回ることだが、実力は申し分ないだけに、さらに魅力的な“何か”を輝かせる必要はありそうだ。日本のR&Bシーンが枯渇しかけている昨今に潤いを取り戻せる存在として、大いに期待したい。



◇◇◇

<SET LIST> ※主な演奏曲
INTRODUCTION(VIDEO)~ Journey(intro)
Borderless
Beautiful Imperfections
Kiss of Life(Original by Sade)
The Truth
INTERMISSION(VIDEO)
Sumthin' Sumthin'(Including Member Introduction)(Original by Maxwell)
Freedom & Sound
Forget About It(Including phrase of“It's Love”by Jill Scott)
Set Me Free
A Night in Tunisia(be famous for Chaka Khan“And The Melody Still Lingers On”)
Make the Change
I Love When
≪ENCORE≫
Possibility
Spark


<MEMBER>
Nao Yoshioka(vo)

Hiroyuki Matsuda(松田博之)(MD,b)
Tak Tanaka(田中“TAK”拓也)(g)
Fuyu(ds)
Jamba(key)
Takegoro Kobayashi(小林岳五郎)(key)
Mizuki Kamata(鎌田みずき)(back vo)
Yuho Yoshioka(吉岡悠歩)(back vo)



◇◇◇












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CICADA@WWW X

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 ライヴ・バンドとしての生命力と成長を実感した一夜。

 メジャー・シーンへと歩を進めたアルバム『formula』のリリースを記念したCICADAのワンマンライヴ〈CICADA 2nd Full ALBUM“formula”release oneman show〉が金曜夜の渋谷で開催。その雄姿を目に焼き付けるべく、渋谷WWW Xへと馳せ参じた。

 今作『formula』について、前回の記事(CICADA『formula』)で「本作はCICADA史上最高の名盤、ではない」「これはCICADAアルバムという以上に“及川アルバム”という気がする」などと煽ったが、CICADA作品という意味では発展途上という感覚はやはりまだ変わらずにある。ただ、同時に「進取性に富むハイセンスなポップ・サウンドで描き上げた、非常に刺激的なアルバム」という思いもそのままだ。彼らにとっては近い将来への決意表明のような思い入れの深い作品を、どのようにライヴで表現するのか。大きな期待を持ちながら、開演の刻を待った。

 「スタイン」「daylight」と切れ目なく続く構成に冒頭から熱量が上昇していたステージだったが、早々と結論から言ってしまえば、彼らがこの上ない“ライヴ・バンド”であることを再認識したライヴだったといえる。

 冷静と情熱の間ならぬ、官能と美麗を湛えたクール&セクシーなヴォーカルとワイルド&ホットなフロウとを巧みに使い分ける城戸あき子、フリーキーなアドリブを組み込みながらファンタジックでモダンな音世界へいざなう及川創介、幻想的な世界観の構築を電子的な音鳴りでサポートする若林ともの3人をフロントに、ブレなく安定したボトムを紡ぎ続ける職人芸を発揮する木村朝教、強弱や抑揚を変えながらも細やかなビートの滴を放ち続ける櫃田良輔をバックにしたバンドが創るサウンドは、“音の近未来的パレード”とも呼べそうなほどの華やかさと躍動感を提示。その瞬間にしか鳴らせない音の大切さや愉しさを自身で体感すると同時に、オーディエンスへもその心地良さを伝播させていく。解き放たれたグルーヴはオーディエンスの五感に反応し、さらなるうねりを生み出していく。

 パブリック娘。を招き入れての「初恋とはなんぞや」「What's going on」では“ぶっつけの美学”(といったら恰好良すぎか)ならではのコラボレーションでフロアの温度を上昇。その終盤はやや緩い連係にもなりかけたが、そこはストリート的な感覚で乗り切っていく。何よりも音に揺られる楽しさに包まれた瞬間でもあった。
 もう一組のゲスト、GOMESSは咆哮のように投げつけるフロウが印象的だが、刺々しさや痛切さの中に見え隠れする本質を問うよう。そこに城戸のヴォーカルとバンドのグルーヴが重なり、他ではあまり見られないようなパフォーマンスに、オーディエンスの興奮度もさらに高まったのではないか。

 ゲストとの“一期一会”を披露する一方、メンバー自身もその時にしか鳴らせない音に愉しむ姿も。ヴォーカルフェイクを繰り出す城戸に普段とは異なる鍵盤アレンジで前奏を“仕掛ける”及川をはじめ、各メンバーそれぞれが互いに音を鳴らしながら会話を交わすような光景は、ライヴを満喫しているとともに自身のパフォーマンスに対してオーディエンスが納得出来るとの自信も感じているのだろう。楽曲だけではない、寧ろライヴこそが彼らの生命線ではないか、そんな思いが脳裏を往来しながら、体躯を走る爽快なグルーヴに身を委ねる自分がそこにいた。



 アンコールまでライヴ・バンドの矜持を背負いながら、グッドミュージックを鳴らし続けた彼ら。ラストでは彼らの現在地とその行く先を示した重要曲「YES」で締めたが、個人的に最もヴォルテージが上がったのが「one」。“立ち止まって 前を向いて 今を睨みつけろ”とメンバー全員が眼前を直視して焚き付けるように挑んだ姿には、迫力という言葉だけでは片付けられない“凄味”も垣間見られた。

 日に日に進化を伴っていく彼ら。あとは自身の音楽をどう伝播させていくかだ。来年4月には代官山UNITでのワンマンショウも決定した。メジャー・デビューはあくまでも通過点。そう語った彼らの意気込みがどのように具現化されるのか。彼らのさまざまな一期一会とそこから生まれるケミストリーの成り行きが気になるところだ。

◇◇◇

<SET LIST>
00 INTRODUCTION
01 スタイン
02 daylight
03 Naughty Boy
04 INFLUX
05 ゆれる指先
06 DROP
07 初恋とはなんぞや(guest with パブリック娘。)
08 What's going on(guest with パブリック娘。)
09 Reloop
10 one
11 MISTA B
12 City Light(guest with GOMESS)
13 Colorful
14 door
15 ポートレート(including phrase of“Abyss”by Especia)
16 stand alone(blue)
17 dream on
≪ENCORE≫
18 YES

<MEMBER>
CICADA are:
城戸あき子(vo)
木村朝教(b)
櫃田良輔(ds)
及川創介(key)
若林とも(key)

Guest:
パブリック娘。(斎藤辰也、清水大輔、文園太郎)(MC)
GOMESS(MC)



◇◇◇

【CICADA関連の記事】
・2016/11/21 CICADA『formula』
・2016/07/15 CICADA@渋谷WWW
・2016/05/26 CICADA@渋谷CLUB QUATTRO
・2016/05/05 CICADA『Loud Colors』
・2016/02/19 CICADA@LOOP ANNEX
・2016/01/08 CICADA@代官山LOOP
・2015/11/04 CICADA@WWW
・2015/03/16 CICADA『BED ROOM』
・2015/01/25 Mixed Up@代官山LOOP

◇◇◇
















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Especia@六本木VARIT

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 ヴェールを脱ぎ始めた“Especia the Second”。

 ガールズ・グループ“Especia”恒例のモーニング・ライヴ・シリーズ〈Hotel Estrella〉。これまでは洋食や中華を提供してきたが、第4弾は〈みなと亭〉と題して和食を用意。会場はEspeciaの根城になりつつある六本木VARIT。「津軽海峡・冬景色」「酒と泪と男と女」「舟唄」「函館本線」「つぐない」など演歌・歌謡曲がBGMとしてフロアに流れるなか、開演時間より10分ほど遅れてステージが開幕した。

 今回の〈みなと亭〉は心躍る瞬間が次々と現れた、そう感じたぺシスト(Especiaのファン)も多かったのではないだろうか。アンコールでは「Danger」「Rainy Blues」の新曲2曲を披露。ファットなベースの導入から始まり、鷺巣詩郎や島野聡などMISIAワークスを思わせる流麗なストリングスや80年代ディスコ調シンセ・サウンドで展開するファンキーな「Danger」、ベースは効かせているもののフワフワと浮かぶようなチープなシンセとファンシーなアレンジが強調されたラヴリー・ポップ「Rainy Blues」は、それぞれ指向が異なるとはいえ、どちらもこれまでのEspeciaの範疇を踏襲したもの。前体制の作風を愛聴していたファンには食指が動くだろう。個人的には「Rainy Blues」は“黒さ”やうねったグルーヴをあまり感じず、それほど傾聴とはならないが、“箸休め”的なものとしては“アリ”か。その路線に偏重するのは首を傾げるものの、彼女らが封印しかけた少女性を紐解いてグループとしての多面性を顕示すると考えれば、面白い試みと言える。

 ところが、それ以上のトピックが待ち構えていた。思い返してみれば、その予兆は冒頭の「Affair」で魅せた冨永悠香のフェイクだったかもしれない。
 通常は新曲披露でも十分な話題となりうるのだが、このステージでは過去曲ながらも新体制となって初披露となった楽曲が組み込まれていた。「Over Time」「オレンジ・ファストレーン」がそれに当たるのだが、初披露となるだけでなく、これまで主にコーラスを担当していた森絵莉加がリード・ヴォーカルを執るという“サプライズ”。そればかりか、ミア・ナシメントも「シークレット・ジャイヴ」などでリード・パートが増えるなど、全体的に冨永悠香のリード・ヴォーカルを軸にしていた演出にも変化が見られた。

 ただ、まだ森は丁寧にヴォーカル・メロディをなぞることに注力する部分が大きく、また表情豊かに楽曲の尺をフルに歌い切るだけの“体力”は備わってなかったというのが実のところ。「ミッドナイトConfusion」や「We are Especia~泣きながらダンシング~」などでは彼女らしい勢いのある歌唱で魅せていただけに、もしかしたら今回披露した「Over Time」「オレンジ・ファストレーン」の音域が彼女の声域とあまり合っていないのかもしれない。
 また、ミア・ナシメントは前回「Fader」でのハイトーンから始まる冒頭で一気にぺシストの心を掴むような歌唱を披露したが、「シークレット・ジャイヴ」での低いパートはやや辛そうなところも。キャリアも浅く仕方ないところもあるが、まだ楽曲全体を実践で歌い切るには経験値が不足している感は否めない。「Savior」などでのコーラスではクオリティを感じさせるだけに、こちらも森同様に安定して歌い切る(演じ切る)“体力”が必要だ。



 しかしながら、こういったパートやリード・ヴォーカルの変更は、Especiaというグループに大いなる魅力をもたらしそうでもある。冨永がコーラスに回る部分が増えたことでハーモニーの質が向上。冨永自身がリード・ヴォーカルに絡んだり、コーラスでフェイクを重ねたりと、ヴォーカルに華やかな彩色を湛えるようになってきた。もちろん、元来表情の豊かさという意味ではグループ内で高いレヴェルにあった彼女だっただけに、楽曲によって他メンバーにリード・ヴォーカルを委ねることで、一人で背負い過ぎる精神状態からも解放され、余裕が生まれたことから伸びやかなヴォーカルワークも戻って来た。グループとしてもさまざまなヴォーカル構成が可能となり、歌唱演出もヴァラエティに富むようになる。特にハーモニーの頻度が高くなることで、楽曲の奥行きを拡げられるのは、アピールに値するアイテムになるはずだ。以前はハーモニーを組み込んでいたとしても、大胆さはなく音圧もなかったため、それほど目新しい武器となるまでには届かなかったが、ようやく鮮明で豊かな彩りと薫りを満たすハーモニーで楽曲にアクセント(Especiaだけに“スパイス”と言い換えた方がいいか)を付加していけそうな気配だ。

 次第にMCの回数も増え、トークでは関西弁や日常生活の話題が聞かれる場面も。元のMCに戻りつつあることを良しとするかは別として、そのようなトークが出来る心境になってきたことは良い傾向だろう。新体制でこの朝企画シリーズや対バンその他のイヴェントで場数を踏んできた結果が、少しずつ余裕となって表われてきているのかもしれない。

 冒頭で“ヴェールを脱ぎ始めたEspecia”とミステリアスに煽ってはみたものの、実態はステージ・パフォーマンスに有効な多面性を持ち合わせてきたということか。これまでなかなか確信が持てずにいた伸びしろや可能性を改めて実感したステージ。とはいえ、重い期待を寄せるにはまだ早い。その資質やポテンシャルは十二分に醸し出していたが、今後いかに加速度をつけて成長出来るかがカギとなりそうだ。


◇◇◇

<SET LIST>
00 INTRODUCTION
01 Affair
02 海辺のサティ
03 Mistake
04 FOOLISH(12" Vinyl Edit)
05 Over Time
06 シークレット・ジャイヴ
07 Savior
08 Fader
09 オレンジ・ファストレーン
10 Nothing
11 Boogie Aroma
≪ENCORE≫
12 Rainy Blues
13 Danger

<MEMBER>
Especia are:
Haruka Tominaga(vo)
Erika Mori(vo)
Mia Nascimento(vo)


◇◇◇

【〈Especia the Second〉(新体制)以降の記事】
・2016/06/25 ESPECIA@渋谷Club asia
・2016/08/12 Especia「Mirage」
・2016/08/28 Especia@渋谷CHELSEA HOTEL
・2016/09/11 Especia@O-nest
・2016/10/16 Especia@六本木VARIT
・2016/11/13 Let's Groove@六本木VARIT

◇◇◇













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FC東京×東京武蔵野シティFC@味スタ【味スタ大集合】

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 FC東京を応援する人たちへの選手参加ファン・サポーター感謝イヴェント〈味スタ大集合♪〉が味の素スタジアムで開催。その企画の目玉として公開トレーニングマッチが行なわれた。相手は東京武蔵野シティFC。馴染みのない名前と思われる人もいるかもしれないが、2016年1月に東京武蔵野シティフットボールクラブと改称する前は“横河武蔵野フットボールクラブ”と名乗っていた。そう、FC東京が前年度優勝し、2012年にディフェンディングチャンピオンとして迎えた天皇杯2回戦で、ロスタイムに岩田がロングシュートを決め、ジャイアントキリングを達成したあの横河武蔵野だ。



 試合は30本×3本。リーグも終了しており、逼迫した緊張感はなかったが、鳴り物応援などは禁止という環境のなか、ボールや体が接触する音などが聞こえる貴重な観戦となった。
 一進一退が続き、なかなかシュートも生まれなかったが、3本目に平山がPKを決めて、1対0でFC東京が勝利。おそらく24日の天皇杯へ向けて怪我などに配慮したのか、当日出場が予定される主力選手は1本目でお役御免といった感じ。2、3本目は本来のポジションではない選手も少なくなかったが、J3のFC東京U-23で調子を上げていた林などは、いい動きを見せていた。
 
 一足先に帰国したムリキや柳、橋本は不参加だった模様。

 その他、トークライブやプレゼント抽選会(選手がスタンドまでやって来た)、サイン会もあり。サイン会は抽選に外れたので参加出来ず。フードコーナーで適当に食べて帰途に。リーグ戦終了後、天皇杯まで時間があるなか、いい企画だったと思う。榎本達也の(今季で契約満了)挨拶は少し寂しかったが。

 天皇杯のチケットは12月10日に準々決勝、準決勝、決勝が同時発売という厳しい状況。サポーターはまずは決勝進出を信じて、試合前にチケット争奪戦に勝利するミッションが待ち構えているか。

◇◇◇

【練習試合】
2016年12月03日/味の素スタジアム/11:00キックオフ
観衆:5,685人
天候:晴
気温:--.-度/湿度:--%
主審:/副審:、/4審:

 FC東京 1(0-0、0-0、1-0)0 東京武蔵野

得点:
(東):平山相太(3本目12分、PK)
(武):

≪スターティングラインアップ≫
【1本目】※30分
47 GK 秋元陽太
06 DF 室屋成
03 DF 森重真人
05 DF 丸山祐市
25 DF 小川諒也
48 MF 水沼宏太
27 MF 田邉草民
04 MF 高橋秀人
39 MF 中島翔哉
20 FW 前田遼一
38 FW 東慶悟

【2本目】※30分
13 GK 榎本達也
19 DF 平岡翼
29 DF 吉本一謙
04 DF 高橋秀人
25 DF 小川諒也
32 MF ユ・インス
34 MF 野澤英之
24 MF 佐々木渉
16 MF ネイサン・バーンズ
09 FW 平山相太
23 FW 林容平

【2本目】※30分
13 GK 榎本達也
32 DF ユ・インス
29 DF 吉本一謙
34 DF 野澤英之
25 DF 小川諒也
19 MF 平岡翼
24 MF 佐々木渉
37 MF 寺山翼(※ U-18)
44 MF 阿部拓馬
09 FW 平山相太
23 FW 林容平

≪マネージャー≫
篠田善之

◇◇◇





























































◇◇◇





 東京ドロンパが途中で“ゆりかる”こと橘ゆりかを呼び込んでの“恋ダンス”。TBS系ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』のエンディングで主演のガッキー(新垣結衣)らが披露して人気だが、そのドラマ主題歌、星野源「恋」に合わせてドロンパも踊る。ゆりかるは踊りもガンバレ(笑)



 ドラマは全然見てませんが、やっぱりガッキーはカワイイな、おい!





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KING@LIQUIDROOM

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 プリンスにその才能を絶賛されオープニングアクトに抜擢、ロバート・グラスパーはグラミー・アルバム『ブラック・レディオ』に起用するなど大きく注目された、パリス、アンバーの双子のストローザー姉妹とその親友アニータ・バイアスによるドリーミー・ソウル・ユニット、キングのワールドツアーの一環で行なわれた来日公演。ワールドツアーは9月29日の地元・ロサンゼルスから始まり、北米、アイスランド、オランダ、イギリス、スウェーデン、デンマーク、リトアニア、ドイツ、スイス、イタリア、ポルトガルを経て、大阪、東京と回り、2016年のワールドツアーの最終公演がジャパンツアーの東京公演となった。

 2016年5月の初来日公演(記事はこちら→KING@Billboard Live TOKYO)はソールドアウトとなり、その後夏にサマーソニックでの再来日を促したが、今回は月曜夜ということと4月中旬の“プリンス死去”直後の5月の初来日時よりはその喧騒もようやくひと段落ついたこともあろうか、客足も思ったほどは伸びなかったようだ(それでも2~300人は集まったか)。シャーデーの楽曲がBGMで流れるなか、定刻より約5分遅れで暗転。2度目の単独来日公演がスタートした。



 大陸的な彩りを思わせる極彩色のドレスを纏った3人がおもむろにステージイン。パリスがキーボードに囲まれた中央に佇み、両サイドにアンバー(右)とアニタ(左)のスタンドマイクが立つという構図とこの3人だけでライヴを完遂するという姿勢は、前回と変わりなし。スモークがステージ上を覆うなかでスポットライトが走り、蜃気楼のようなおぼろげな空間が創り出されると、その様子を音像化したような浮遊感を帯びた鍵盤が漂い始める。“ドリーミー・ソウル”とは言い得て妙なサウンドが、キングの音を愛するオーディエンスたちにゆっくりと包み込んでいく。

 ただ、冒頭から「ザ・ライト・ワン」あたりまではシンセの低音が強すぎたのと序盤の緊張からかヴォーカルもそれほど滑らかさを帯びず、やや音が噛み合わずにくぐもってしまった印象。そのあたりは会場の機器とのバランスがとれていなかったのかも知れない。
 
 だが、「ザ・ライト・ワン」からそのまま「イン・ザ・ミーンタイム」へ移行する際、シンセをミュートさせてハーモニーを強調させるように演出したくらいから次第に全体的にメリハリが生まれ、酩酊感をもたらすヴォーカルワークと多彩な音色を奏でるシンセが溶け合い始める。

 やはり序盤は声があまり出ていなかったのだろう。中盤以降はしっかりとしたブラックネスを感じさせる声圧の高いヴォーカルとささやかに寄り添うようなハーモニーを巧みなバランスで押し引きしていく。CD音源のような幻想的なドリーミング・サウンドとはまた異なる90年代R&Bらしいスムーズなグルーヴがフロアを支配し、オーディエンスの身体をやわらかな炎で温めていくよう。そのなかで、エレピでの弾き語り風の「ヘイ」やたゆたうようなファルセット・コーラスを駆使した「ネイティヴ・ランド」など、彼女らのファンタジックなハーモニーにフォーカスした楽曲を投下していく。
 そうかと思えば、それまでの彩度とは一変した赤いライトでフロアを染めた「キャリー・オン」でスムーズとパッショネットを行き交うような演出を見せるなど、単なるシンセとヴォーカルの組み合わせとは思えない“想像世界を有機的に再現した”とでも言えそうな音を紡ぎ出していく。

 アニタのスポークン・パートのある「オー・プリーズ!」でオーディエンスとコール&レスポンスしながら(煽りを受けて観客がもっと歌えればより盛り上がっただろうが、おそらく歌詞が分からないので歌えない人が多かった)、多幸感に満たされると本編は幕。鳴りやまない拍手に時間をそれほど置かずに3人は再登場。日本のファンへの感謝を述べた後、ロバート・グラスパー『ブラック・レディオ』への参加曲「ムーヴ・ラヴ」を披露して、東京でのドリーミー・ソウル・ナイトは終わりを告げた。

 正味70分とコンパクトなステージとシャイな佇まいは以前と同じだったが、まだデビュー・アルバムを出して間もないということもあり(EP『The Story』はリリースしているが、同作収録曲はほとんどがデビュー・アルバムにも収録)、現時点においての尺については致し方のないところ。無理にカヴァー曲などをふんだんに採り入れることも可能だろうが、それによって彼女らが構築する世界観が崩れてしまっては本末転倒だ。他の干渉に脅かされずに自身のコントロール下でステージをやり切る強い意志を謳っている彼女たちだけに、楽曲数が充実してくれば、その課題は次第に解消されることだろう。

 観賞も二度ほどゆえ、明確なことは言えないが、個人的には今回のリキッドルームのようなスタンディングのライヴハウスよりもビルボードライブの方が、彼女らのパフォーマンスを最大限に発揮させるという意味では良かったと感じた。爆音や尖った音はもちろん、ファットなボトムや派手やかな音で圧倒するタイプではないので、会場の相性は意外と影響が出てしまうのかもしれない。

 次の来日は2ndアルバムが出て以降となろうか。まだ全くの未定だが、新たな楽曲が増えてくれば、ヴァリエーションに富んだステージになってくるだろう。進化と成長を遂げたドリーミー・ソウル・アクトに期待したい。


◇◇◇

<SET LIST>
00 INTRODUCTION
01 Mister Chameleon
02 The Greatest
03 The Right One
04 In The Meantime
05 Love Song
06 Red Eye
07(Runaway)
08 Supernatural
09 Hey
10 The Story
11 Computer Love(Original by Zapp & Roger)
12 Native Land
13 Carry On
14 Oh, Please!
≪ENCORE≫
15 Move Love(Original by Robert Glasper Experiment featuring KING)

<MEMBER>
KING are:
Paris Strother
Amber Strother
Anita Bias



◇◇◇


















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Lalah Hathaway@BLUENOTE TOKYO

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 振り袖姿でも魅せた、一足早いスムーズ&メロウなクリスマス。

 3年連続グラミー・ウィナーとなったレイラ・ハサウェイのブルーノート東京公演。昨年は12月23日から3日間とまさにクリスマス・ナイトとなった公演だったが、2016年は2週間ほど早めの12月上旬に開催となった。メンバーはキーボードがリネット・ウィリアムズ(ドレッドヘア、鼻ピアス、ダークな色のリップの大柄な黒人女性)、ステージ右端のドラムがチャールズ・ストリーター(ハット帽姿もイケてる、トリー・ケリー、ジェニファー・ロペス、チャカ・カーン、ジャクソンズ、ステファニー・ミルズなどのツアードラマー)となったほかは、ジェイソン・モラレス、デニス・クラークの背丈のある男性ヴォーカル二人に、ギターのイザイア・シャーキー(ディアンジェロ&ザ・ヴァンガードのギタリスト)、ベースのエリック・スミス(サマソニでリアーナのバンドに参加)というお馴染みの面々。誰もがタレントの持ち主で、イザイア・シャーキーの長尺ギター・ソロの独壇場も会場を大いに沸かせたが、個人的には強烈な漆黒のファットなグルーヴを生み出しながらも決して耳障りにならないエリック・スミスのベースにも存分に唸らされていた。



 まず、観客を驚かせたのが登場時。メンバーにやや遅れてステージにやってくる姿は、なんと振り袖姿。藤色(黒めの紺?)を下地に薄い白桃色などを内側にあしらった大きな花が描かれたヴィヴィッドな着物姿に早速感嘆の声が漏れる。これが実にキュートな艶姿で、レイラ本人もかなりお気に入りの様子。普段はドレスに裸足で歌う彼女だが、この日は草履で登場。ただし、ステージではその草履を脱ぎ、足袋のまま歌っていた。

 次なるサプライズは終盤の「サムシング」(スナーキー・パピー feat.レイラ・ハサウェイ名義でグラミーのベストR&Bパフォーマンス受賞)でトランペッターのTOKUが登場。単にバックでホーンを鳴らすだけでなく、ステージインやおら挨拶もそこそこにレイラとのスキャットの掛け合いに。低音から高音までを駆使しながら麗しいスキャットを鳥のさえずりのごとく発するレイラに、渋くも優しいスキャットで応えるTOKU。レイラが“この着物姿どう? 綺麗でしょう”と言わんばかりにしゃなりと背帯を見せつければ、TOKUがソバを食べるジェスチャーをしながらスキャットで応えたりと、愉しげな“会話”が展開する微笑ましいステージに、多くの観客が心をほっこりとさせた。

 序盤で繰り出された「リトル・ゲットー・ボーイ」やアンコールラストで披露した「ディス・クリスマス」など、父ダニーの名曲を歌うことも充分なサプライズに当たるとは思うが、もはやそれが大事でなくなっていると見えてしまうところが彼女の自立や矜持でもあり、また父(との楽曲)に自然体で接するという形でのリスペクトなのだろう。以前はかたくなに歌わなかった父の曲も、気持ちが変化し歌う(歌える)ようになってからは、いっそう歌うことへの余裕や懐の深さが増したといえる。



 昨年のセットリストを見返したところ、ほとんど大きな変化はなし。一つ挙げられるとすれば、ファレル・ウィリアムスと共演した「サレンダー」がトピックとなるか。タラジ・P・ヘンソンやジャネル・モネイが出演する2017年1月全米公開映画『ヒドゥン・フィギュアーズ(Hidden Figures)』のファレル・ウィリアムス監修のサントラにレイラ・ハサウェイ&ファレル・ウィリアムス名義で収録された曲で、ファレルとのコラボレーションということで今回の公演では披露する可能性は低いだろうとあまり期待はしていなかったのだが、ファンのニーズを捉えてか、セットリストに組み込んでくれたようだ。

 それでも、父ダニーの楽曲をはじめ、アニタ・ベイカーの「エンジェル」、アース・ウインド&ファイア「ラヴズ・ホリデイ」、低音のコール&レスポンスでコミュニケーションしたルーサー・ヴァンドロス「フォーエヴァー・フォー・オールウェイズ・フォー・ラヴ」など、ほとんどがカヴァー曲での構成。とはいえ、イザイア・シャーキーのギター・ソロほか、バンド・メンバーのソロ・パートなどを含めながら、カヴァーという意識を感じさせない多彩なアレンジワークで時をゆっくりと、そして濃密でスムース&メロウな空間を創り上げていく(ボッサやクラブ寄り風のビート/リズムのイントロを導入したアレンジの「サマータイム」などは、一聴してそれと判らず)。
 そして何よりも代え難いのは、レイラのヴォーカルワークだ。安定感はもちろんのこと、他の黒人ヴォーカリストには出せないローヴォイスをしとやかな表情で弾き出していく。派手なシャウトは一切なし。フロアを日向のようなやわらかな空気で包みながら、ひらひらと蝶が舞うがごとくの気品を漂わせる。それでいてチラリとファンキーなノリも垣間見せたりして、そのバランス具合の絶妙なことといったらない。

 最も大きいのは、カヴァーであれオリジナルであれ、一瞬にしてレイラの歌にしてしまっているところか。それも、単に我流でカヴァーするのではなく、オリジナルや歌い継いできた先達たちに尊敬の念を払いながら、自身の歌として魂を宿しているところが素晴らしい。敏腕なるバックバンドが色を足すことで、さらなる深化がもたらされるところもステージの濃度を高めている。

 激しく身体を揺らし叫ぶことはなく、薪を燃やした炎が揺らぐかのごとくゆるやかに流れるステージ。だが、その炎の熱度は見た目以上に高く、情熱的だ。オーディエンスの心に魂(ソウル)の炎を灯していくかのよう……そう感じられるひとときを今年も再びクリスマスの月に体感した。その喜びを、いま一度噛み締めたいと思う。



◇◇◇

 レイラ・ハサウェイ関連の公演記事は次のとおり。

・2012/01/07 LALAH HATHAWAY@BLUENOTE TOKYO
・2013/01/25 Robert Glasper Experiment@Billboard Live TOKYO
・2015/12/25 Lalah Hathaway@BLUENOTE TOKYO



◇◇◇
 
<SET LIST>
01 Let Go
02 Little Ghetto Boy(Original by Donny Hathaway)
03 Summertime(Original by George Gershwin, Also known as singing such as Billy Holiday)
04 Angel(Original by Anita Baker)
05 Love's Holiday(Original by Earth, Wind & Fire)
06 My Heart Is Yearning For Your Love(Original by The Gap Band)
07 When Your Life Was Low(Original by Joe Sample & Lalah Hathaway)
08 Forever, For Always, For Love(Original by Luther Vandross)
09 Surrender(Original by Pharrell Williams feat. Lalah Hathaway)  
10 It's Something!(Original by Brenda Russell)(Special guest with TOKU)
≪ENCORE≫
11 The Christmas Song -Merry Christmas to You-(Chestnuts Roasting On An Open Fire)(with Isaiah Sharkey's guitar)
12 This Christmas(Original by Donny Hathaway)

<MEMBER>
Lalah Hathaway(vo)

Jason Morales(vo)
Dennis Clark(vo)
Lynette Williams(key)
Isaiah Sharkey(g)
Eric Smith(b)
Charles Streeter(ds)

Special Guest:TOKU(tp,vo)


So beautiful!“Cho Kawaiiiiiii”!!!!!!!
◇◇◇














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近況注意報 1217 音楽篇

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 やっぱり逐一アルバム・チェックしないとダメだな-と思いながらも、「体力の限界(財力ともいう)、気力もなくなり(老化ともいう)……」というライク・ア・千代の富士の引退口上のような状態に陥ってるかもしれない野球狂。ですどうも。

 前回より月日が経ちましたが、今年の「My Favorites Album」企画のこともあるので、ひとまず最近チェックしたアルバムの一部を列挙しておこうかと思います。数が多いのでレビューもどきの短文で誤魔化してますが、そこはご容ク赦テリア。(ハァ?)

 ということで、どんと見据えて!(Don' miss it!)

◇◇◇

Afro Parker/Life
Alicia Keys/Here
A Tribe Called Quest/We got it from Here... Thank You 4 Your service
Beyonce/Lemonade
Bruno Mars/24K Magic
Cicada/Formula
Common/Black America Again
Craig David/Following My Intuition
Domo Genesis/Genesis
Eric Benet/Eric Benet
Fantasia/The Definition of...
Frank Ocean/Blonde
Gallant/Ology
Hidden Figures:The Album
Hikaru Utada/Fantome
Izzy Bizu/A Moment of Madness
Jacob Collier/In My Room
Jacob Latimore/Connection
Jamila Woods/Heavn
Jared Evan/The Blanket Truth
Joe/My Name Is Joe Thomas
Kindred The Family Soul/Legacy of Love
Nao/For All We Know
Nao Yoshioka/The Truth
Noname/Telefone
Phonte & Eric Roberson/Tigallerro
Solange/A Seat At The Table
T.A.M.M.I/Sleeping Nukes of Mine
Tinashe/Nightride
Usher/Hard II Love
The Weeknd/Starboy

◇◇◇

■ Afro Parker/Life

 2MC+楽器隊5人からなる生音ヒップホップバンド、“アフロパ”による2ndアルバム。ヒップホップをベースにしながら融通を効かせた雑多で楽しい音楽遊戯。サラリーマン哀歌などの日常を飾らずに描く。

AFRO PARKER - Life Is Good


■ Alicia Keys/Here

 『ガール・オン・ファイア』以来4年ぶりの6thアルバム。女性としてより意識が高揚したのかジャケットはすっぴんで勝負。エイサップ・ロッキー客演の「ブレンディッド・ファミリー」や夫のスウィズ・ビーツ制作曲などを収録。

Alicia Keys - In Common


■ A Tribe Called Quest/We got it from Here... Thank You 4 Your service

 ATCQの18年ぶりのアルバム。急逝したファイフ・ドーグのヴァースも含まれているとのことだが、懐かしさとユーモアが交差した作風に。アンドレ3000、ケンドリック・ラマーほか豪華なゲストで華を添えている。

A Tribe Called Quest - We The People....


■ Beyonce/Lemonade

 最近は音源と映像をパッケージするスタイルを構築しているB嬢だが、本作もケーブルテレビ局でショートフィルムを流した後に音源を発表。ジェイ・Zに対する浮気疑惑の追及をアルバムでやる肝の座り具合には感服するしかない。

Beyoncé - Formation


■ Bruno Mars/24K Magic

 「アップタウン・ファンク」で賞レースを席巻した彼が、今度は自作で狙いに来た約4年ぶりの3作目。「24K・マジック」ほか、ディスコ・ブギー、JB風ファンクからニュージャックスウィングまでの楽しいブラックてんこ盛り。

Bruno Mars - 24K Magic


■ Cicada/Formula

 メジャー・デビュー作となる2枚目。ヒップホップ濃度が高まってはいるが、持ち前のポップネスは失われずに、むしろ奥行きを増した感じ。紅一点のヴォーカル、城戸あき子の声色もより豊潤に。レビュー→『formula』

CICADA(シケイダ)- ゆれる指先

 
■ Common/Black America Again

 シカゴ出身のリリシスト・ラッパーが“黒人の生命”について問うたと思われる11作目。スティーヴィー、ジョン・レジェンド、ビラル、BJ・ザ・シカゴ・キッド、マーシャ・アンブロージアスらが参加したコンシャスな一枚。

Common - Black America Again ft. Stevie Wonder


■ Craig David/Following My Intuition

 “2ステップの貴公子”が2ステップにも回帰しながら良き時代のR&Bを提示した約6年半ぶりの一枚。クラブ/ダンス系の作家陣を迎えながら、UKガラージとR&Bの融合を追求。「16」など思わず身体が動きそうで、劣化は一切なし。 

Craig David - One More Time


■ Domo Genesis/Genesis

 LAの音楽集団“オッド・フューチャー”のラッパーによるソロ・デビュー作。「ダッパー」のアンダーソン・パークやウィズ・カリファほか多彩な客演で、ミステリアスで漂流感漂うヒップホップ/ソウルを構築。

Domo Genesis - DAPPER feat. Anderson .Paak


■ Eric Benet/Eric Benet

 “リアル・ソウルの伝道師”が20年超のキャリアで初めて冠したセルフ・タイトル作。安定感とネオソウル然とした質感は期待に違わぬもので、「サンシャイン」は北米ラジオR&Bチャートで1位に。タミアとのデュエットは日本盤に。

Eric Benet - Sunshine


■ Fantasia/The Definition of...

 『アメリカン・アイドル』優勝者という華やかさとは裏腹に壮絶な人生を送って来ただけに、かつては歌に力が入り過ぎるきらいもあったが、本作はポジティヴに。これぞR&Bディーヴァという歌は間違いなく本物。

Fantasia - So Blue


■ Frank Ocean/Blonde

 当初は『ボーイズ・ドント・クライ』と呼ばれ、アップル限定公開のヴィデオ作『エンドレス』の直後に発表したアルバム。内包的な作品ゆえ評価は分かれるところだが、成熟度は上昇。ビヨンセ、ケンドリック・ラマーほかが客演。

Frank Ocean - Solo


■ Gallant/Ology

 米・メリーランド州出身、LA拠点のR&Bシンガーのデビュー・アルバム。何よりもエモーショナルなファルセット・ヴォイスが特色で、フランク・オーシャンの質感とサム・スミスの歌唱の邂逅とも。濃密なトーンのネオソウル。

Gallant - Miyazaki


■ Hidden Figures:The Album

 ノンフィクション映画のサントラ。ファレル・ウィリアムスの全曲プロデュースで、映画主演のジャネール・モネイほか、アリシア・キーズ、メアリー・J.ブライジ、レイラ・ハサウェイらが盛り上げる。安定のファレル節。

Lalah Hathaway, Pharrell Williams - Surrender (Live at TIFF)


■ Hikaru Utada/Fantome

 “人間活動”を経ての『HEART STATION』以来8年ぶりのアルバム。譜割りや詞世界はかなり成熟した感があり、もはや比類対象はなく“宇多田”としかカテゴライズ出来ないほどに。レビュー→『Fantome』

宇多田ヒカル「真夏の通り雨」(Short Version)


■ Izzy Bizu/A Moment of Madness

 英メディアに絶賛され、新世代ソウルフル・ポップ&ファッション・アイコンとして期待される新鋭シンガー・ソングライターのデビュー作。キュートなアデルとでも言えそうなヴォーカルとソウルフルな作風が魅力。

Izzy Bizu - White Tiger


■ Jacob Collier/In My Room

 クインシー・ジョーンズの肝入りとなる“一人多重録音”の天才、ジェイコブ・コリアーのデビュー作。ソウル、ヒップホップ、ベース・ミュージックまでを包含したフューチャー・ジャズ風か。意外と太い声に“好み”が出そう。

Jacob Collier - Saviour


■ Jacob Latimore/Connection

 こちらのジェイコブは、親戚にケニー・ラティモアを持つミルウォーキー出身のR&Bシンガー・ソングライター。15歳でティーンアイドルとしてデビューした時のあどけなさを払拭した、セクシーな仕上がりとなっている。

Jacob Latimore - The Real


■ Jamila Woods/Heavn

 シカゴ出身のシンガー/詩人、ジェイミーラ・ウッズのデビュー・アルバムはなんとフリーダウンロード。時折オーガニックな部分も覗かせるR&Bで、黒人、女性などについて歌う。チャンス・ザ・ラッパーらが参加。

Jamila Woods - Blk Girl Soldier


■ Jared Evan/The Blanket Truth

 NY出身のシンガー/ラッパー、ジャレッド・エヴァンのアルバム。ミネソタのラッパー、アラン・キングダムを迎えた「ジ・エンド・ゲーム」やイルマインド制作の「ビッグ・ブラザー」など、ポップネスを湛えた作風に。

Jared Evan - Role Model


■ Joe/My Name Is Joe Thomas

 キダー・マッセンバーグの下を離れて初となる12作目。引退を仄めかしてのフルネーム・アルバムだからか、アデル「ハロー」のカヴァーなどR&Bに留まらない絶唱ぶりを披露。沁みるドラマティックなミドルが多め。

Joe - Happy Hour ft. Gucci Mane


■ Kindred The Family Soul/Legacy of Love

 ネオフィリー・シーンを築いたオシドリ夫婦デュオの6thアルバム。ジェイムス・ポイザーら多才な制作陣が集っているが、愛情の力なのか、これまでと同様終始ブレないネオソウルを披露。生命感が躍動するスムーズな作風。

Kindred the Family Soul - All My People ft. Freeway


■ Nao/For All We Know

 “ネイオ”と読む英・ノッティンガム出身の28歳のデビュー作。ディスクロージャー『カラカル』にゲスト参加し注目を浴びた、近未来R&B路線。伸びやかでスウィートな歌唱は、時折ブランディを彷彿とさせることも。

NAO - Girlfriend


■ Nao Yoshioka/The Truth

 大阪出身のソウル・シンガーの3rdアルバム。従来とは矛先を少し変え、ネオソウル路線へ挑戦。ジル・スコットあたりを想起させる作風はなかなか上質。個人的には「ビューティフル・インパーフェクション」が好み。

Nao Yoshioka - I Love When


■ Noname/Telefone

 前述のジェイミーラ・ウッズ同様、チャンス・ザ・ラッパー周辺でも活動するシカゴの女性ラッパーで、こちらもフリーダウンロード作。とぼけた(?)ジャケだが“オーガニックソウル・ミーツ・ガーリー”的な展開はなかなか。

Noname - Diddy Bop (ft. Raury & Cam O'bi)


■ Phonte & Eric Roberson/Tigallerro

 フォーリン・エクスチェンジ(FE)のフォンテとネオソウル勢を手掛けるエリック・ロバーソンのコラボ作。FE一派のニコライやゾー、パリス・ストローザー(キング)ほかが集結し、ジャジー&メロウな心地良いグルーヴを構築。

Phonte, Eric Roberson - Something


■ Solange/A Seat At The Table

 姉の『レモネード』以上に傑作といえる、約8年ぶりのフル作。全米初登場1位となるのも当然で、終始アンビエントな空気を帯びたR&Bで貫徹。生々しさを美的なものへと昇華したのは、ラファエル・サディークの力によるところ大。

SOLANGE - CRANES IN THE SKY


■ T.A.M.M.I/Sleeping Nukes of Mine

 京都を拠点とする女性シンガーのフル・アルバム。やや土の薫りを感じさせる声色で展開するフューチャリスティックなソウルネスが特色。派手さはないが、ジワジワと内側から浸透するようなグルーヴが耳を惹かれる。

T.A.M.M.I - sleeping nukes of mine teaser


■ Tinashe/Nightride

 トラップ/アンビエントR&B歌姫として期待されるも、2ndアルバム『ジョイライド』や来日公演が中止を余儀なくされ、厄払いした方が良さそうなティナーシェ。ミックステープ名義ながらポップ寄りに妥協しない好内容で一安心。

TINASHE - Nightride


■ Usher/Hard II Love

 約4年ぶりの通算8作目。現代美術家のダニエル・アーシャムが手掛けた灰とクリスタルによるアートワークはやや背筋がゾクゾクしそうだが、内容は見事な先進性豊かなR&B。出演映画への書き下ろし「チャンピオンズ」なども収録。

Usher - No Limit ft. Young Thug


■ The Weeknd/Starboy

 先行シングルとなるタイトル曲に迎えたダフト・パンクのほか、ケンドリック・ラマーやラナ・デル・レイらの客演を含む、ウィークエンドのメジャー4作目。時流を掴むアンテナは健在か。しばらくは勢いが続きそうな予感。

The Weeknd - Starboy


◇◇◇

















 以上です、キャップ。










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近況注意報 1221 音楽篇

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 前回の記事(「近況注意報 1217 音楽篇」)で取り上げ忘れた5作品を追加でご紹介(あー、よりによってEspeciaを取り上げ忘れるとは……)。
 
 近日は各メディアやブログなどで2016年のベスト・アルバムが公私ともども発表されていたりしますが、個人的にも今年は非常に悩ましくなりそう。聴き忘れ、チェックし忘れも当然ながらたくさんありますし、これから駆け込みで聴いたものが一気に2016年を代表する一枚になる可能性も?「PERFECT HUMAN」が一気に「PPAP」に取って代わられたようにね。




 
 ということで、どんと見据えて!(Don' miss it!)

◇◇◇

Especia/Danger
John Legend/Darkness and Light
Jones/New Skin
The Seshen/Flames & Figures
Wakita Monari/In The City

◇◇◇

■ Especia/Danger

 新体制始動後、EP『Mirage』に続く初シングル。新機軸の『Mirage』の流れに一呼吸置くような、フットワークの軽いサウンドプロダクツはLUCKY TAPESの高橋海が担当。ディスコ・ブギーな表題曲「DANGER」と甘くファンシーな「レイニー・ブルース」とポップに寄せた作風。

Especia - Danger



■ John Legend/Darkness and Light

 元来、愛を問うてきた人だが、タイトルよろしく黒人への暴力やレイシズムへの嘆きを“闇”、全ての人が要する愛を“光”と位置付け、愛娘に捧げるバラード「ライト・バイ・ユー(フォー・ルナ)」などで普遍的な愛を歌う。チャンス・ザ・ラッパーやミゲルら実力派を客演に迎え、時流を掴む感覚にも狂いはなし。

John Legend - Love Me Now



■ Jones/New Skin

 “ネクスト・アリシア”“ポスト・シャーデー”“2016年版 FKAツィッグス”などの惹句が飛び交う、英・ロンドンを拠点とする才女の1stフル。ラナ・デル・レイ作品などを手掛けるジャスティン・パーカーのプロデュース、ザ・エックス・エックス作品で知られるロディ・マクドナルドがミキサーを担当。浮遊感の中に凜とした才知がチラリ。

JONES - Melt

 

■ The Seshen/Flames & Figures

 エリカ・バドゥ、ジェイ・ディラあたりを想起させる作風で話題となったサンフランシスコ・ベイエリアを拠点とする7人組、ザ・セシェンの2ndアルバム。R&Bからダンス・ポップまでを包括する、いい意味で節操のない雑食性が魅力。西海岸より吹きかける新たなフューチャー・ソウルといえるか。

The Seshen - Flames & Figures



■ Wakita Monari/In The City

 Especiaを卒業後、約半年を経て〈ヴィヴィド・サウンド〉よりリリースしたソロ・デビュー・シングル。レーベルメイトの星野みちるを手掛けるはせはじむがプロデュース。表題曲は奇しくも旧Especiaを継承したようなシャレたグルーヴのファンキー・ポップな仕上がり。ただし、パンチある伸びやかな歌唱は抑え目。

脇田もなり - IN THE CITY


◇◇◇

















 以上です、キャップ。










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Especia@六本木VARIT

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 ダイバーシティ(多様性)とメタモルフォーゼ(変身)。

 マンスリー・モーニング・ライヴ企画〈Hotel Estrella〉の2016年内ラストはクリスマス・イヴに〈Hotel Estrella -EVE-〉として開催。朝の飯倉片町、六本木VARITにぺシスト(Especiaのファン)たちが足を運んだ。
 ワム!「ラスト・クリスマス」のカヴァーなどBGMも当然クリスマス仕様。だが、開演時刻10分後の暗転からはクリスマスムードは影を潜め、身体が無意識に反応する心地良いグルーヴがフロアを支配し始める。爽やかなイヴの朝もEspeciaのグルーヴは不変だ。



 前回の〈みなと亭〉では新曲「Danger」「レイニー・ブルース」に「Over Time」「オレンジ・ファストレーン」初披露および森絵莉加のリード・ヴォーカルというトピックがフロアを沸かせたが、今回の〈-EVE-〉でも新たな仕掛けを組み込んできた。
 フロアの沸点が一気に上昇したのが、MC明けの「ナイトライダー」。EP『DULCE』に収録された初期のファンキー・ディスコ曲で、Especiaの原点とも言える楽曲(Especiaのアイデンティティ……とまで言うのは大袈裟か)の一つを森のメイン・ヴォーカルで披露。以降、冨永悠香のメイン・ヴォーカルに戻って初披露となる「スカイタイム」、前回初披露した森リードの「オレンジ・ファストレーン」とEP『AMARGA』収録曲を続けると、旧知のEspeciaサウンドを愛するオーディエンスの身体の揺れも必然と激しく熱を帯びていくのを肌で感じた。それからファンキー・ポップな新曲「Danger」への高揚をもたらした展開は、過去と現在を結び付けただけでなく、編成の変容がありながらも彼女たちがEspeciaを“継続”しているという偽らざる事実をも体現したかのようにも思えた。
 
 序盤では「Savior」に続いてミア・ナシメントがリードを執った「雨のパーラー」も披露。これまでの森とミアはバック・ヴォーカルとダンスで脇を固めてきたが、ここに来てさまざまな可能性にチャレンジしている模様。森は低音から高音へと激しい抑揚のあるメロディの楽曲では、従来あまり喉が強いタイプではなさそうなゆえ苦しそうな場面も見られ、ミアもハマる声域とそうでない声域での質の差にバラつきが見られるなど、正直なところ課題も多い。ただ、クオリティの高い楽曲を単に歌い披露するというだけでなく、リード・ヴォーカルを変えたり、コーラス・アレンジやフェイクを組み込むことによって楽曲自体の懐の深さを導き出す効果は確実に生まれている。ハモリを駆使するパートでは楽曲や歌唱に重層的な厚みを加えることに成功。喩えれば、青いバナナがようやく黄味を帯びてきたというくらいのまだ微かな深みではあるが、色香や心の機微が歌からも伝わり、楽曲と詞世界の行間とが巧みに重なることでよりヴィヴィッドな心象風景を描けていけるような予兆も感じられた。

 森やミアのリードがもたらす効果はそれだけではなく、特に冨永がサイドに回ることで全体のヴォーカルワークの強度を目覚ましいほど高めていた。表現力という意味ではグループ1だった冨永だが、これまではメインを張ることがかえって重圧となり、力みが不安定なピッチや感情の希薄さにも繋がっていたこともあった。しかしながら、コーラスでハモリなどメイン・ヴォーカルとは異なる描写や声の押し引きを知り、愉しみを覚えているのか、彼女のヴォーカルからは明るい表情やメリハリも生まれ、時折織りなすフェイクにもようやく余裕(力みがないという意味での)が窺えるようになってきた。それを示した最たるものがこちらも初披露となった「West Philly」。元来、冨永の見せ場の多いけぶったブルース・ソウルだが、当初はそのアダルトな曲世界を上からなぞっていたものが、声だけでなく体躯から心情に訴えかける“滲み出るもの”へと変化しつつあるようだ。「ナイトライダー」が表のトピックであるなら、「West Philly」はグループとしての表現力の底上げを感じた陰の大きな要素に違いない。



 「新体制でこの朝企画シリーズや対バンその他のイヴェントで場数を踏んできた結果が、少しずつ余裕となって表われてきているのかもしれない」と前回のライヴレポートで記したが、彼女たちのさまざまな可能性を確かめ、トライする場としても有効に機能し始めているのではないか。確かに、決して大きな規模ではない企画イヴェントの域を出ない朝ライヴではある。それでも、ファン・ベースに披露する切磋琢磨や、その先の成長と躍動の芽吹き、多様な可能性が花開くまでの過程を垣間見られるという意味においては、興味深いステージには他ならない、今だからでしか体感出来ない貴重なステージと言えるだろう。

 2017年のEspeciaはどのような変化と刺激をもたらすのか。その幕開けは1月9日のLUCKY TAPESとの2マン・イヴェントになる。


◇◇◇

<SET LIST>
00 INTRODUCTION
01 Nothing
02 Savior
03 海辺のサティ
04 雨のパーラー
05 Mistake
06 West Philly
07 ナイトライダー
08 スカイタイム
09 オレンジ・ファストレーン
10 Danger
11 FOOLISH(12" Vinyl Edit)
≪ENCORE≫
12 レイニー・ブルース
13 Boogie Aroma(2016 Ver.)

<MEMBER>
Especia are:
Haruka Tominaga(vo)
Erika Mori(vo)
Mia Nascimento(vo)


◇◇◇

【〈Especia the Second〉(新体制)以降の記事】
・2016/06/25 ESPECIA@渋谷Club asia
・2016/08/12 Especia「Mirage」
・2016/08/28 Especia@渋谷CHELSEA HOTEL
・2016/09/11 Especia@O-nest
・2016/10/16 Especia@六本木VARIT
・2016/11/13 Let's Groove@六本木VARIT
・2016/11/27 Especia@六本木VARIT


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FC東京×川崎@味スタ【天皇杯】

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 クリスマス・イヴの多摩川クラシコは哀れな終焉に。

 川崎は確かに巧さと強さを見せていた。FC東京が好調であっても結果としては同じだったかもしれない。だが、それ以上に納得出来ないのは、相手へ向かう闘志や気持ちが戦前の言葉を裏切るようにほとんど見えなかったということだ。リーグ戦1stステージ9位、同2ndステージ9位、年間も9位という中途半端が拭えない順位同様に、何となくサッカーをやって何となく勝ち負けを繰り返したそれ以上のものが、今年の総決算としてタイトルを是が非でも獲りたいと言葉では示したチームからは感じられず、川崎の威力に押し込まれるがまま、無様な敗戦を喫した。

 ボールを奪うと前へ前へとボールを素早く繋ぎ、ゴールへ近づくにつれてスピードと迫力を増す川崎に対し、ゆっくりとハーフウェーを越えると狭いスペースでパスをこねくり回して相手のプレッシャーを受けるとすぐに後ろか横へ一旦ボールを戻し、高い位置でボールを奪うも一気に相手ゴールへとひたむきに走ることはなく、味方の上がりを待つことが大前提にでもあるかのように相手の帰陣を許すハーフスピードな持ち上がりでシュートチャンスを逃し、シュートを撃てないまま相手にボールを奪われるFC東京。

 スピードで圧倒しないのであれば、パスやクロスに高い精度が求められるが、それもなし。敵陣深いスローイングはチャンスにならず、受け手の動きがないために出しどころを失って簡単にボールをロスト。ライン際へボールを追うスピードや懸命さもその意識の差が大きく表われて、負けるべくして負けたといった内容だった。

 唯一アグレッシヴと思われる積極果敢にシュートを放った中島もその精度は低く、攻撃陣はその中島頼みと言われても致し方ないほどに積極性を失っていた。森重をはじめ全体的に身体が重そうで、個々の判断力も素早さを失い、乏しかった。何より何としてでも勝ってやろうという気概があまり感じられなかったのは非常に残念極まりない。

 さらには、ベンチワークにも疑問が残った。故障個所があったという前田を先発させたが、いつものようなポストプレーは見られず。後半から交代となった徳永、コーナーキックの精度も欠き、全体的にパフォーマンスが低調だった水沼、この面々は果たして先発を託すべき要素があったのだろうか。高橋は懸命さは見えるも、周囲とのコンビネーションが合わずにその意気込みも空回り。また、途中出場となった小川、平山、阿部はピッチの流れを変えるどころか、試合に上手く入れずに出場後しばらくは足にボールが着かない状態が続いていた。平山こそ最後に得点を決めたが(得点という結果を出せば、FWとしてはそれでよしとするのかもしれないが)足元も不安定だったし、阿部に至っては水沼との交代がまったく有効でないことを示しただけ。
 個人的は、今回ベンチ入りならなかった林やネイサン・バーンズあたりが好調をキープしていたと思うが、ネイサン・バーンズは前述の先発陣や平山、阿部よりも出場の序列が低いというのであれば、来季は戦力として捉えてないのとほぼ同意になろう。少なくともこの日のメンバーの中では前への推進力はチーム随一だと思うが、その選択肢を選べない篠田監督はじめとする首脳陣にも、やはり大きな課題が積み重なっていると言えそうだ。城福体制を立て直したということではもちろん評価されていいが、そもそもより高みを目指して躓き、低迷に喘いだところを元の出発点近くに戻しただけといえば、それまで。問題はそこからどうやって高みへ上るために壁を打ち破っていくか、なのだ。

 また、サポーターの気迫も川崎に軍配か。試合前から声を出し続ければいいという訳ではないが、風間監督最終年、無冠で終わらせないという気概が、大きな一つの声となってチームを十二分に後押ししていたと思う。東京は声は出ていない訳ではないが、どこかまとまりがなく、やや一体感を欠いていた感じも。

 元日決勝の舞台への道は閉ざされ、2016年のFC東京は終わった。今後は次第に去就が明らかになってくる選手も少なくないだろう。下手に勝ち進んで始動までの期間を徒に短くし、来季の準備が整わないままシーズンをスタートさせてしまうという今季のような幕開けは回避出来そうだとポジティヴに考えるしかないか。
 過ぎたことは仕方ないが、この不甲斐なさを不甲斐ないままで終わらせるか成長を閉ざしてしまうか、これを糧に飛躍に繋げられるかは来季にかかっている。ホーム最終戦で森重が口にした“プロフェッショナル”なチームへ生まれ変わるためのチャンスはそう転がっている訳ではない。しっかりと胸に刻み、痛感し、来季への準備へ取り掛かってもらいたい。

◇◇◇

【第96回 天皇杯全日本サッカー選手権大会 準々決勝】
2016年12月24日/味の素スタジアム/16:04キックオフ
観衆:29,378人
天候:曇
気温:10.9度/湿度:27%
主審:佐藤隆治/副審:田中利幸、山際将史/4審:中村太

 FC東京 1(0-2、1-0)2 川 崎

得点:
(東):平山相太(90+1分)
(川):大久保嘉人(20分)、エウシーニョ(28分)

≪スターティングラインアップ≫
47 GK 秋元陽太
06 DF 室屋成
03 DF 森重真人
05 DF 丸山祐市
02 DF 徳永悠平 → 小川諒也(45分)
04 MF 高橋秀人
27 MF 田邉草民
48 MF 水沼宏太 → 阿部拓馬(75分)
38 MF 東慶悟
39 MF 中島翔哉
20 FW 前田遼一 → 平山相太(63分)

≪サブスティテューション≫
31 GK 圍謙太郎
25 DF 小川諒也
29 DF 吉本一謙
10 MF 梶山陽平
44 FW 阿部拓馬
09 FW 平山相太
16 FW ネイサン・バーンズ

≪マネージャー≫
篠田善之

◇◇◇

【第96回 天皇杯全日本サッカー選手権大会】
第4回戦 2016/11/09(水)19:00〇FC東京 2-1 Honda FC(味スタ)

準々決勝 2016/12/24(土)16:00✕FC東京 1-2 川 崎(味スタ)
準決勝  2016/12/29(木)15:05 A(横浜FM✕鹿島)✕ B(大宮✕川崎)(日産ス) 
決 勝  2017/01/01(日)14:00  A ✕ B(吹 田)

◇◇◇



























































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